地球のすぐ内側を回る惑星と言えば金星ですね。
月を除けば一番身近な天体で大きさも地球とほぼ同じなので、空を見てみると金星が浮かんでいる様子が伺えます。
肉眼でも容易に見えるので古来より占星術や神話などで金星の話題は必ずと言っていいほど出てきます。
ところがその金星には実は他の惑星とは異なる面白い特徴があります。
中でも特に注目すべきは自転の向きです。
もしかしたら学校の授業でも習うことかもしれませんが、金星という惑星を語る上では是非ともご紹介したいポイントです。
また自転の向きがどの様に決まってくるか、そこをメインに金星についてあれこれ触れていきます、ぜひご覧ください!
金星は自転の向きが時計回り!
金星と言えば膨大な量の二酸化炭素で覆われており、地表の温度が約470度近くもある灼熱の惑星です、生命が到底住めそうにない環境です。
しかしもし仮に住むことができるとしたら、太陽が地球と違って西から昇って東に沈むという怪現象を目にすることができます。
これは冒頭でも紹介したように、金星の自転の向きが関係しているが故に起きる現象です。
地球でも太陽が昇ったり沈んだりしますが、これは地球が自転しているから起きる現象であって、その向きも自転の向きに関係しています。
地球の場合は反時計回りに自転しているので、太陽が東から昇って西に沈みますね。
ところが金星はなんと地球とは逆向き、つまり時計回りに自転しているのです!
これが最も特筆すべきポイントと言えます、地球と逆向きに自転するから必然的に太陽が西から昇って東に沈んでしまうのです。
特に高校の英語の授業で仮定法について学習する時に以下のような例文を目にすると思います。
Even if the sun were to rise in the west, I would not change my mind!
この英語の文章は有名で暗唱文などで丸暗記した人も多いでしょう。
日本語に訳せば「たとえ太陽が西から昇っても、私の考えは変わらない!」となります、これ自体はあり得ない事なので仮定法の例文として習うわけです。
けどよく考えてみたら金星だけは「太陽が西から昇って東に沈む」のであり得ない話ではありません。
もちろん住むことができればの話ですがねwww
今のところ誰も金星に行ったことがないので、太陽が西から昇って東から沈むというのはまだまだ非現実の域を超えません、一度は見てみたいですけどね!
では向きが逆となれば気になるのはその理由ですね、どうして金星だけ時計回りになってしまったのか?
ただしそれを解説する前にそもそも自転の向きがどのようにして決まったのか?
これについて理解して頂くとスッキリ読み進められますので、まずは簡単にそのポイントからお伝えしていきたいと思います。
そもそも自転の向きはどう決まる?
金星以外の惑星の自転の向きはなぜ反時計回りなのか?
結論から言いますと、実は自転の向きは全て惑星が公転する向きと同じです。
公転の向き、即ち惑星が太陽を中心にして回る向きだけは全ての惑星が反時計回りで一致しています、これは金星も同じです。
これに関しては太陽が反時計回りで自転しているからと言う理屈ですんなり説明できます。
話せばかなり長くなるので敢えて簡単に解説しますが、公転と自転の向きが決まったのは惑星の誕生初期まで遡るのです。
太陽系にある全ての惑星は誕生初期は無数のガスや塵でした。
それらが徐々に集まってできたのが微惑星で、その微惑星同士がいくつも衝突して重なって大きくなったのが惑星なのです。
ガスや塵、さらに集まってできた微惑星も太陽の巨大な重力に引っ張られる形で回転せざるを得なかったので、必然的に公転の向きも反時計回りになったというわけです。
そして公転の向きに釣られて自転も自然と反時計回りになった、という流れになったと単純に理解してもらえれば大丈夫です。
お風呂の栓を向いた時に水が渦を巻きながら流れ込んでいくのを目にしたことがある人は多いと思いますが、あれと同じような感じだと思ってもらえればよいです。
なぜ金星だけ逆になった?
惑星の自転と公転の向きが反時計回りだったのは、単純に太陽の自転の向きと一致していたという偶然の産物に過ぎません。
では金星だけなぜ逆向きになってしまったのか?
当然金星も他の惑星と同様誕生初期は自転の向きは反時計回りだったでしょう。
物理の法則で考えても金星だけ太陽の自転の向きに逆らうだなんてあり得ません。
これに関しては、現在でもまだ研究段階ではっきりとした明確な説はありません。
現在最も有力視されているのは、過去に小惑星が衝突して自転が逆向きになった、という説です。
小惑星の衝突はとてつもないくらい巨大なエネルギーが発生し、惑星の自転運動にも大きな影響を及ぼすのです。
誕生初期の金星は反時計回りに自転していたけど、小惑星の衝突で金星の時点の向きが無理矢理変えられた(もしくは自転軸を傾けた?)というイメージですね。
これは地球の衛星である月が誕生したジャイアント・インパクト説とも共通していますね。
惑星が誕生した当初は太陽系の周囲を小惑星が今よりも遥かに多く公転していました。
そういった小惑星が出来上がったばかりの地球や金星といった惑星に衝突する確率も遥かに大きく、決して起こりえない事ではありません。
「月は出来立てほやほやの地球に小惑星が衝突して、バラバラになった地球と小惑星の破片が合体して出来上がった。」というのがジャイアン・インパクトの内容です。
地球の自転軸が23.4度と傾いているのもこの小惑星の衝突が原因だと考えられています。
しかしこれが本当だとしたら、地球と同様金星にも衛星が1つくらいはあってもよさそうですが、実は金星には衛星はありません!
金星の自転の向きが変わるくらいですから、物凄く大きな小惑星が衝突したはずです。それなら衛星が出来てもおかしくないはずなのに、金星には衛星がないのはおかしいですよね?
そこでこの矛盾に答えるような形で次のような説もあります。
惑星内部の運動も原因?
以下のサイトをご覧になりますと、金星の自転の向きは金星内部のCMFや大気摩擦による潮汐作用が原因だったと記されています。
金星の自転軸は反転したのか
わかりにくい内容になっていますが、要は惑星内部のマントルの対流や金星を覆う分厚い大気の摩擦によって金星の自転速度にブレーキがかかって反転したということです。
実は金星は自転が逆向きであるだけでなく、自転周期も243日(地球時間で換算)と超長いのです!
上で紹介した様々な要素で金星の自転速度にブレーキをかけたのなら、これだけ自転速度が遅くなるというのもある程度理解できます。
もちろんどちらの説が有力で理解しやすいかは人それぞれです。
いずれにせよまだまだ研究の余地が残されているのが現状で、この謎の解明はかなり時間がかかりそうですね。
おまけ:金星は1年より1日の方が長い!
金星の自転に関しては実は公転周期と比較するとさらに驚くべき特徴があります。
実は公転周期は224日しかなく、これは自転周期の243日よりも少なくなっています!
もちろん地球時間に換算しての話ですが、これが何を意味するのかというと金星では1日が経過する前に1年が経過することになります。
金星では太陽が西から昇って東に沈むと言いましたが、この怪現象も地球時間で約7カ月以上経過しないと拝むことはできないわけです。
またこれも豆知識になりますが、金星の自転軸の傾きは倒立しているとはいえほぼ垂直(177.36度)です。
このため地球に見られるような四季の変化はありません、地球で四季が見られるのは自転軸が23.4度も傾いているからです。
もっとも超温暖化が進んだ灼熱惑星なので冬なんか訪れるわけないんですけどね(;^^)
まとめ
今回は金星の自転の向きと速度について、理由も一緒に解説してみました。
まとめますと、
- 金星の自転の向きは時計回りで、太陽が西から昇って東に沈む
- 自転の向きが逆になったのは、過去に小惑星が衝突したのが有力な説
- 惑星内部の様々な要素で自転速度が遅くなり反転した説もある
となります。
地球の自転速度も徐々に遅くなっているそうですが、金星に比べればまだマシな方です。
地球の自転の向きが反転することはあり得ないと思いますが、もしそんなことが起きると間違いなく人類の存亡に関わるレベルでヤバいでしょう(‘ω’)