学校の理科の授業で惑星について学習する時は、
水金地火木土天海(すいきんちかもくどてんかい)
という覚え方で8つの惑星を内側から順番に覚えると思います。
8つの漢字は惑星の頭文字で、それぞれの後ろに”星”とつければ太陽系にある8つの惑星がすんなりと出てきますね 。
ただし一昔前までは8つではなく、9つもあったのです!
筆者が子供の頃は上の8つの漢字に加えさらに”冥”までありました。
この”冥”とは冥王星の”冥”のことです。
最近の学生の方はもしかしたら聞いたこともない天体かもしれないですね。
聞いたことがないのも無理はないです。
実は冥王星は2006年に国際天文学連合によって惑星の定義から外されてしまったのです!
この出来事は筆者にとってもかなり衝撃的でした。
冥王星という名前の響きが個人的に好きでしたが、何よりも学校の授業で習った内容が即訂正されたことに対しては少しだけ悲しくなったことと、「大人は勝手だなぁ。」と変な思いを抱いていました。
一体なぜこの星が惑星の定義から外されてしまったのか?
改めてその理由について惑星の定義をおさらいしつつ解説していきます!
惑星の定義をおさらい!
冥王星が惑星の定義に当てはまらない理由について解説する前に惑星の定義についておさらいしておきます。
現在の惑星の定義は2006年に国際天文学連合が定めたもので、その天体が以下の3つの条件全てに当てはまった時に惑星に分類されるとしています。
- 太陽の周りを公転している
- 自身の重力によって十分な質量を保ち、ほぼ球形になっている
- その天体の軌道上から他の天体を一掃している
この定義に当てはめて考えると、確かに地球を含む8つの惑星は全て上の3つの条件を満たしています。
もちろん軌道上から他の天体を一掃しているとありますが、この天体には惑星の周りにあり衛星(地球の月や木星のエウロパなど)は含まれません。
実はそれまでは惑星の定義に関しては明確にこれだ!と言われてはいませんでした。
あくまで太陽系の周りを回る球形の天体というのが基本的な考えで、あまりにも質量や直径が小さい天体に関しては小惑星に分類されるに過ぎませんでした。
冥王星に関してはその位置が海王星よりも外側にあって観測しづらく、発見当初は地球とほぼ同じかそれ以上の大きさを誇る天体と考えられていたので、惑星に分類されていたのです。
しかし後述するように観測技術の向上のおかげで、冥王星の軌道周辺に冥王星とほぼ同じ大きさの天体が多く見つかったことで、惑星の数が多くなりすぎることからこの定義を見直すことに繋がったということです。
冥王星は惑星の定義に当てはまらないとされ、新たに設けられた「準惑星」に分類されることになりました。
新しい惑星の定義も広く受け入れられたわけではありません。
実は上に定めた国際天文学連合の定義に反対する天文学者も少なからずいて、定義案に投票した天文学者は学会に参加した2700人の内のたった5%に過ぎなかったようです。
あまり多くの天文学者に受け入れられなかったのは、新定義案では惑星と他の天体を正確に線引きするには曖昧な部分が多いということにあります。
そもそも惑星は太陽系にある天体だけでなく、他の恒星系にもあります。
天の川銀河だけでも2000億個近くの恒星があるとされていますが、要するに「宇宙にある全ての天体に当てはまるのか?」という疑問があります。
天の川銀河の大きさや星の数はどのくらい?夏と冬の違いは?
また二重惑星や浮遊惑星(恒星系から弾き出され銀河をさまよう惑星)との線引き、さらには
「他の天体を一掃するとしたら、冥王星は海王星の軌道に近い場合があるので、冥王星が存在しなくなる。」
という主張もあってなかなか容易には受け取られませんでした。
いずれにせよ反対の声は根強く「冥王星はやはり惑星である。」と定義を見直す動きもあります。
個人的には冥王星が復活してほしいかなぁとは思っていますけどね(;^^)
冥王星が惑星から除外された理由とは?
それでは冥王星がなぜ惑星の定義から外されてしまったのか?
その理由をいろいろと調べてみましたら、主に以下の3点に絞られるみたいです。
- 離心率が大きく楕円軌道であること
- 太陽の自転軸に垂直な赤道面を基準とした軌道傾斜角が他の惑星と比べて大きい
- 2000年代以降冥王星の軌道付近に冥王星とほぼ同じ大きさの天体が見つかった
それぞれ順番に詳しく見ていきましょう!
離心率が大きく楕円軌道である
離心率とは高校の数学で習う知識でここでは詳しい解説は省きますが、要するにその天体の軌道がどれだけ円軌道に近いかを表す指標だと思ってください。
天体に関しては軌道離心率と呼ぶようにしていますが、この値が
- 0の時は(真)円軌道
- 0~1の時は楕円軌道
ということになります。
地球の場合は軌道離心率が0.0167なのでほぼ円軌道に近いことになります。
地球以外の惑星だと最も離心率が大きいのが水星でその値は0.2056ですが、冥王星の離心率はさらに大きく0.248となっています。
軌道傾斜角が他の惑星と比べて大きい
これは冥王星の軌道を宇宙空間から真横から見た図で見るとわかりやすいです。
真横から見てみると冥王星の軌道は他の惑星と比べて大きく傾いていることがわかります。
8つの惑星に関しては最も大きく傾いている水星ですら7度ですが、冥王星はそれよりも大きい17度となっています。
冥王星とほぼ同じ大きさの天体が次々と見つかる
やはりこれが最も大きな理由になるでしょう。
冥王星は1930年にアメリカの天文学者クライド・トンボーによって発見されたのですが、当初は地球に匹敵する質量と大きさがあると過大評価されていました。
しかし観測技術が向上するにつれて冥王星は地球どころか月の直径と質量よりも小さいことがわかってきました。
そのため惑星としての位置づけは難しく太陽系外縁天体ではないかという声も徐々に上がってきましたが、依然として国際天文学連合は惑星であると主張し続けました。
ところが2000年以降でさらに望遠鏡の技術が進歩すると、再び冥王星の地位が揺らぎ始めます。
なんと冥王星の軌道周辺、さらに外側に冥王星とほぼ同じ大きさを誇る天体が次々と見つかったのです!
最も衝撃的だったのが2005年7月に発見された、2003UB313という天体です。
後にエリスと命名されることになるこの天体は、サイズに関してはまだ論争がありますが、少なく見積もっても冥王星とほぼ同じかそれ以上と言われているほどです。
そのため発見者とメディアでは冥王星に次ぐ第10惑星であると謳ったほどです。
しかしエリスだけでなくその他にも次々と似たような外縁天体が見つかりました。
冥王星を惑星と定義すると必然的にエリスも惑星と定義せざるを得なくなり、そうなるとその周辺に存在する似たような球形の天体も候補になります。
つまり惑星の数がどんどん増えるということになってしまいます。
そもそもサイズに関してもそれほど大きいわけではないですし、楕円軌道であったり軌道傾斜角が大きすぎたりして冥王星やエリスを惑星として定義するにはやや無理な感じがありました。
そういった疑問や声が多いことから、解釈と定義を改めて見直すことで惑星から外して”準惑星“として定義しよう!としたわけです。
準惑星は上に紹介した惑星の定義の3つ目の部分が「その軌道付近にある他の天体を一掃していない」に変わっただけです。
つまり冥王星の他にエリスやマケマケ、ハウメアなどは互いにこの定義に当てはまるため準惑星になるわけです。
実際冥王星はエッジワース・カイパーベルトと呼ばれる軌道を公転していますが、この領域には冥王星と同じように氷からなる小天体が1000以上も発見されています。
また準惑星エリスはエッジワース・カイパーベルトよりも外側にある散乱円盤天体に属されます、周囲にはやはり同じような惑星が多く公転しています。ただこの領域は太陽から遠く暗いため未発見の天体は数知れないと言います。
この新定義に当てはめて考えると実は準惑星の候補になる天体の数は70個以上はあるようです。
もちろんこんな勝手な解釈の変更がまかり通ったら、せっかく発見した天文学者にとっても納得できません。
現にエリスを発見した天文学者のマイケル・ブラウン氏は「惑星に分類するべきだ!」と主張していました。
やはり惑星と準惑星では全然響きが違いますからね。
新たに発見した天体が惑星だったら学校の理科の教科書に名前付きで堂々と紹介されますから、そりゃ意地になってでも主張します、自分が同じ立場でも反対するでしょう。
第9惑星は存在する?
ただこうした天文学者らの夢はまだ尽きてはいないようで、なんと現在でも冥王星以外の第9惑星は存在する可能性は捨てきれていません。
いわゆるプラネットナインと呼ばれている仮説上の大型天体のことですが、実は準惑星エリスを発見したマイケル・ブラウン氏をはじめとして、2016年1月にその存在に関しての間接的な証拠が見つかったとのことです!
これが本当に存在するとしたらまさに天文学の歴史を動かしますね。再び太陽系の惑星の数が9つになる日も来るかもしれません。
ただいくら大きい天体だとしても「他の天体を一掃している」という条件に当たらなかったらその時点で準惑星に降格します。
これに関しては再び惑星の定義を見直しするしかないですね(-_-;)