太陽系の中でも質量、サイズともに最大な惑星といえば木星ですね。
木星が初めて観察されたのは紀元前7,8世紀頃と言われていますが、古代から肉眼でも見えるくらい大きくて非常に重要な星と位置付けられていました。
今でも多くの謎に包まれている木星の性質ですが、中でも木星の内部はどういった構造になっているかが気になりますね。
実は木星は最大の特徴として地表がないと言われています。
ガス惑星だからこうなっているとされていますが、一体これはどういうことなのでしょうか?
地表がないとしたら代わりに何があるのか?一緒に考察していきましょう!
木星には地表がない?
まず基本的なことから解説していきますが、木星、及び次にサイズが大きい土星はそれと同様のガスを主成分とする惑星です。
このような惑星を巨大ガス惑星、またの名を木星型惑星と呼んでいます。
では木星型惑星はどのような特徴を備えているのか?その性質を簡単に箇条書きで紹介していきます。
- サイズが地球より直径が4倍以上、質量が10倍以上と非常に大きい
- 多数の衛星と環を持つ
- コアの周囲を液体もしくは気体の水素やヘリウムが取り巻く
- 地表がなく中心部に近づくに従い水素が圧力によって液体金属化している
- 気圧が1バール(100kPa)となる面を表面とする
これが木星型惑星の主な特徴です。
木星の内部構造は?
木星は上記の特徴を備えた惑星ということになりますが、これを踏まえて内部がどういった構造になっているか、あくまで想像図ですが簡単な画像で紹介します。
木星はケイ素などで出来たコアの周りを大量のガスが取り囲んでいますが、これを地球で例えるとコアの外側にあるマントルや地殻が全てガスで出来ているということになります。
もちろん全てがガスで出来ているわけではなく、中心部に近づくほど圧力が高くなるので、水素やヘリウムが圧縮され、液体化していきます。
仮に木星内部に突入することが出来たとしたら「高圧なガスの中を進んで行って、いつの間にか液体の中に入っていた!」という感覚になるでしょう。
しかし圧力が高くなるとは言いますが、その高さは地球の比ではありません。
木星内部まで探査機を送り込もうとしても、まず外側3割を占める液体の水素の層が厚さ2万km、底部の圧力は300万気圧に達します。
さらに次の液体金属状になっている水素の層は厚さ4万km、その底部は2層目の約10倍となる3600万気圧になります。
木星内部の超高圧の大気に押しつぶされて、目標の1000分の1にも届きません。
仮にここをどうにか突破したとしてもコアにぶつかるので、すり抜けるなんてことはできません(笑)
地球ですら現時点の技術力で最深部のコアどころかマントル内部にも到達できません。これよりさらに環境が過酷な木星なんか土台無理な話ですね。
彗星や小惑星も粉々になる?
この巨大な圧力の凄さを物語っているのが巨大な小惑星が衝突した時です。
1994年に木星にシューメーカー・レヴィ第9彗星が衝突したのは有名ですが、この時衝突した彗星が仮に地球に衝突したとしたらそれこそ人類滅亡は必至レベルです。
ところが木星は衝突した直後こそ大きな衝撃痕が確認できたのですが、その後は衝突前と何ら変化ない姿に変わっていったそうです。
これは何といっても木星内部の超巨大な圧力によって彗星そのものが潰されたということになります。
某ハリウッド映画で、とある星が巨大なバリアーシールドを張る防御システムがありますが、それの比ではないです(笑)
木星の英語名「Jupiter」はローマ神話のユーピテル、またはギリシア神話の神ゼウスから来ているとされていますが、全能神にふさわしい力を誇っているんですね。
気圧1バール付近の高度で雲が存在するため、これで視覚的な表面とも一致するわけです。
(木星の雲はアンモニアの結晶やアンモニア水硫化物で作られたものとされます。)
他の惑星の表面もこの基準で決められています。また木星表面にある巨大な大赤斑については以下の記事をどうぞ!
木星の大赤斑について解説! 近年は徐々に縮小している?
液体金属化した水素って?
木星の内部には液体金属化した水素(金属水素)の層があると説明しました。
しかし「水素が液体金属化する=金属水素になる」っていうのはにわかには信じがたいですね。
これを理解するには高校の化学で習う知識が関係していきます。
前提として元素の『周期表」をおさらいしておきましょう。
水素というのは、原子番号1の元素です。
一般的に知られる水素とは気体分子として知られていて、どこからどう見ても金属ではありません。
ところが周期表をよく見ると、水素のすぐ下はリチウム、ナトリウムといったアルカリ金属がありますね。
電子配置としては似ているわけですが、ここでとある科学者が「もしかしたら特定の条件下では水素は金属化するのでは?」と考えたわけです。
物質に加える圧力の大きさで、同じ温度でも気体から液体、固体と変化したりします。身近な例で言うと、高い山で水を熱すると100度未満で沸騰するという現象です。
ただこれまでに様々な科学者らが金属水素の生成への実験を試みたわけですが、生成条件があまりにも過酷すぎて未だに実現できていません。
※2017年にハーバード大学のアイザック・シルベラ博士が金属水素の生成に成功したとニュースになりましたが、この実験については懐疑的な意見も多いです。
現代の科学力でも500GPa以上の超高圧を加えられれば生成できなくはないとされていますが、その高圧化が実現できている環境こそ木星内部なのです。
もっと厳密に言えば、水素が超高圧化で圧縮されフェルミ縮退を起こして金属化したのが、金属水素となるわけです。
フェルミ縮退という難しい言葉が出てきましたが、これについては素粒子物理学の分野になるので、さすがにここでは省かせてもらいます(;^^)
液体金属化した水素とは一体どんな外見で、どんな性質なのか?一度でいいから見てみたいですね。
またこの金属水素には電気を伝える性質があります。
木星には地球の14倍という強力な磁場が働いていると推測されていますが、この磁場を生み出しているのが木星内部にある金属水素に流れる強い電流です。
きっと内部はラピュタの竜の巣以上の雷の巣窟になっているでしょう…
まとめ
今回は木星の地表、及び内部の構造についての考察でした。参考になりましたら幸いです。
宇宙はとてつもなく広く謎ばかりです。サイズが大きすぎる木星が本当に怖い惑星だなと改めて実感できましたね。
残念ながら木星内部まで辿り着くのは現代科学では到底不可能です。もちろん人が住むなんて夢のまた夢ですよ。
昔放送されたアニメ「宇宙戦艦ヤマト」で木星に浮遊大陸があるシーンを見た時には、なんというか夢が広がるような感じでしたが、木星の現実の姿を調べると、そんな夢が広がるような想像図をいとも簡単に壊しちゃいましたね。
今後の研究でどういった姿を披露してくれるのか、まだまだ目が離せませんね。