普段はパソコンで文字を入力することがすっかり増えてしまい、手書きで字を書くとその下手さに驚いてしまいます(笑)
字も下手ですが、何より漢字の書き方や書き順もあやふやになってきましたね。
この前も、漢字の「北」を手書きで書く時に、左側の部分で思いっきり注意されました。
「北」という漢字、左側をよく見ると、下に突き出ていますね。
ただここで注目してほしいのは、実は下に突き出ていない書体もあるのです。下の画像をご覧ください。
このように「北」という漢字1文字で2パターンあり、左側の書体が異なっていますね。
右側は「上」という漢字を左右対称にしたような形になっています。
え?これってどっちが正解なんだ?
今まで気にしていなかったけど、そもそも同じ漢字として扱っていいの?
我ながらいろんな疑問を抱きたくなっちゃいます(;^^
ということで「北」という漢字について、今回は徹底的に掘り下げていきますよ!
この前も学生のテストを採点したら「北」の字の左側が変わっていたけど、もしかして正解だったかも?
「北」の左側の部分はどう書くのが正解?
「北」という漢字は、左側の縦棒を下に突き出すのが正解か?
それとも「上」という字を、左右反転させてくっつける方が正解か?
その答えについては、実は漢字の書式というものが大きく関係していました。簡単に説明するとこうなります!
- 明朝体やゴシック体、ポップ体では、左側の縦棒は下に突き出る
- 教科書体や行書体では、左側は「上」という字を左右に反転させた形となる
どうしてこのような違いが出てくるのかについてですが、これは『漢字辞典オンライン』で「北」を検索してもらうとすぐに分かります。
ページの画面中央に「北」が大きく書かれていますが、その下に「明朝体」と「教科書体」の2つの項目があります。
それぞれ選択すると、明朝体と教科書体で確かに左側の形が違っているのがハッキリとわかりますね。
また昭和24年に発表された当用漢字字体表(内閣告示第1号)でも、「北」という漢字は手書きと印刷文字で異なる例の一つとして掲げています。
だから「どっちが正解か?」と言われても、それは「書式で異なるからどちらとも言えない。」というのが正解となります。
「北」の左側の書き方を注意深く比べよう!
明朝体とか教科書体とか、いろいろ新しい言葉が出てきたけど、これって何なの?
これらは簡単に言えば漢字の書体のことです。
ワードやエクセルなどで文字を入力する際、画面上部のツールバーで「ホーム」を選択すると、その下に「MS 明朝」と書かれた項目がありますので、それをクリックするといろいろな書体を選択できます。
実を言いますと、日常生活で目にする「活字」というのは、ほぼ全て明朝体で記述されています。
明朝体とは簡単に言えば、印刷に用いられる標準的な書体で、他には漫画や雑誌などではゴシック体、チラシ類などで用いられるポップ体などがあります。
これらの書体で書かれた「北」の左側は、2画目の縦棒を下に突き出す形になります。
「状態」の「状」の左側とやや似ていますね。
これに対して、教科書体や行書体とは、印刷以外の書体で「手書き書体」となります。
学校の授業でも書道を習う機会はありますが、まさに筆で書かれたのと同じような書体なのです。
別名『楷書体』と言いますが、この書体で「北」を表現すると左側の部分は以下のようになります。
縦棒は明朝体と同じで2画目にあたるのですが、3画目の横棒を右上へと跳ね上がらせて縦棒を遮っていますね。
2017年に『今年の漢字』として選ばれた際も、やはり左側は上のようになっていたね。
これを別の言い方で表現すると、左側は漢字の「上」を左右に反転させた字で、右側はカタカナの「ヒ」となっています。
あるいは漢字の「比」の左側の横棒を左側にスライドさせ、その後縦棒とくっつけた横棒を右にスライドさせた字形、という表現もできます。
なるほど確かに「比」が「北」になるね。
「楷書体」は様々ある?
因みにパソコンのワードなどで文字を入力する際、楷書体に該当する書体は実に様々あります。
- HGP教科書体
- HGP行書体
- HGS教科書体
- HGS行書体
- HG教科書体
- HG行書体
- UDデジタル教科書体
- 魚石行書
- 祥南行書体
- 正調祥南行書体
- 有澤行書
- 有澤太楷書
- 有澤楷書
- 恋文ペン字
たくさんありますが、これらは全て楷書の書式になっています。中にはかなり独特な書き方になっているものもありますが(;^^
もし手書きで美しい字を書きたい場面が出てきたら、これらの書式を参考にしてもいいでしょう。
漢字の成り立ちを見てみよう!
さて漢字の北の左側の形の際については、書式によって変わるということがわかりました。
ただそうなると、そもそもどっちが正しい形なのか疑問になる人も出てくるでしょう。
これについては、「北」という漢字の成り立ちを見てもらった方が早いでしょう。以下のページをご覧ください!
漢字の成り立ち|東西南北京夜料理口目足曜【みん日-U.15】のまとめ
上のページの「北」の項目を見てもらえれば、座った人同士が背中合わせで並んでいる様子が見て取れますね。
「北」という漢字は象形文字ですが、まさに「背中合わせで座った人同士」をそのままかたどった形になるわけです。
そうなると楷書体が元々の形なんだね!
だから手書きで「北」を書く際は、あくまで楷書が正しい書式となるので、左側の縦棒は下に突き出ず、右上へと突き出る形で書くのが正解となります。
「北」の部首は、左側の部分ではなく右側の「ヒ」です。
「ひ・さじ・さじのひ」と読むのですが、同じ部首を使う漢字としては「化」や「匙」があります。
なぜ異なるスタイルが誕生したか?
「北」という漢字について、その成り立ちも理解できたと思いますが、なぜ印刷文字だと手書きと異なってしまったのでしょうか?
歴史を辿ると印刷字体については、19世紀頃の中国で確立したとされています。
インターネットやテレビもない時代で人々が情報を知るには紙媒体くらいしかなく、そのために活字印刷の普及を広める必要がありました。
ところがここで一つ問題が起きました。
文字を印刷する際には、予め文字が彫られた図形にインクを流して、それを紙に押し付けています。
昔は木材や金属に文字を彫っていたわけですが、曲線が多い手書きスタイルだと、彫る作業が凄く大変なわけです。
そこで彫る手間を少しでも減らして大量に木版印刷を広めるために、直線が多い明朝体を採用した、という背景があります。
明朝体で書かれた文字は確かに直線が多いですよね。
改めて「北」という漢字も明朝体と教科書体を見比べると、やはり明朝体の方が直線的となっています。
まさに印刷用のために生まれた字体なわけで、未だに手書きの年賀状とかにこだわる人がいるのも頷けます。
まとめ
今回は「北」という漢字について、その書き方を詳しく掘り下げてきました!
それでは簡単にですがまとめといきます。
- 手書きの「北」は2画目の縦棒は下に突き出ず、3画目の横棒を右上に跳ね上がらせる
- 印刷用の「北」は2画目の縦棒は下に突き出る
- 印刷用の字体は明朝体とゴシック体とポップ体、手書きは教科書体と行書体がある
- 「北」の漢字は、背中合わせで座った人同士をかたどった形が起源
- 「北」の部首は右側の「ヒ」である
ポイントは2画目と3画目です。下に突き出るか突き出ないか、ここさえ間違えなければ大丈夫です。
因みに2画目の縦棒をさらに左下に伸ばすと、なんか全く違う漢字に見えちゃうのは気のせいかな?
あ、「兆」という漢字に見える!
それはやり過ぎだろう…