突然ですが皆さんにクイズです。
下の文章で下線を引いた部分を漢字に直してください。
「彼をこのプロジェクトの一員にしないなんて、もってのほかだよ!」
むむこれは余裕だな。正解は「他」だね。
あれ?でも「ほか」って入力すると、「外」っていう字も変換候補に入っているよ。
一見正解は「他」っぽいですが、実は「外」も「ほか」って読むんですよ!
因みに上の問題の正解は「外」となります。一体どうして正解が「外」となるのでしょうか?
2つの漢字は読みが同じなんですが、意味の明確な違いや使い分けをハッキリ理解している人ってどのくらいいるでしょうか?
調べてみたら「ほか」という漢字の表記については、かなり意外な事実が分かりました!
「他」と「外」の意味の違いや使い分けも含めて詳しく見ていきましょう!
例えば人の苗字とかでも「外園(ほかぞの)」ってあるよね。子供の頃は「そとぞのさん」って呼んで、何度も注意された記憶があるよ。
「ほか」の漢字は「他」と「外」のどっちが正しい?
- 彼のほかには誰もいなかった
- ほかにご注文はございませんか?
- その問題は思いのほか簡単だった
などいろいろ例を示しましたが、これら「ほか」の2文字をスマホやパソコンで入力すると、「他」と「外」の2文字が変換候補に挙がります。
一体どっちが正しいんだ?
結論からになりますが、その答えを端的にまとめると以下のようになります。
原則として「ほか」は平仮名で表記するのが正しいが、一部例外として「外」を用いることとする。
平成22年に内閣によって作成された訓令で通知された内容を基にすると、このようになります。
「ほか」という字は基本的に平仮名表記が正しいことになるので、「他」や「外」といった漢字で表記してはいけないことになっています。
- 又 → また
- 従って → したがって
- 且つ → かつ
などがあります。
これらの字はむしろ漢字表記する例自体が少ないので、あまり気になる人はいないかもしれませんが(;^^
実は公用文や新聞紙、ビジネスで使用する文書などでは、「ほか」というのはほぼ全て平仮名表記となっているんです。
それもこれも、上で書いたルールがあったからなんですね。
確かに新聞紙を眺めても「ほか」というのは、平仮名で書かれていることが多い気がする。
つまり「ほか」というのは、そもそも無理に漢字で書く必要はありません。
「ほか」を「他」と書いてしまうと、国語の教師から「それは間違っているぞ!」と指摘を喰らう可能性もあります。
長年「ほか」の漢字として、「他」と「外」の2種類が使われていたので、政府としては混乱を防ぐために敢えて平仮名表記にしたというのが背景にあるようです。
ただし一部例外として、「ほか」を「外」と表記することが認められています。
これは一体どういうケースでしょうか?それを解説する前に、まず「他」と「外」の基本的な意味の違いから解説していきましょう!
「他」と「外」の違いを詳しく!
「他」と「外」は、いずれも小学校低学年で習う常用漢字ですね。
改めてこれら2つの漢字の意味と読みを簡単に解説しておきます。
- 他
- 読み:タ、▽ほか
- 意味:別の、自分以外の
- 反対語:自
- 外
- 読み:ガイ、ゲ、そと、はず(す)、はず(れる)、ほか
- 意味:その範囲を超えた部分
- 反対語:内
いずれも漢字辞典オンラインを参考にしています。
見てもらえればわかりますが、両方とも「ほか」という読みはあります。
ただ小学校では「他」は「た」の読みとして、「外」は「そと」という読みで習っている人が多いでしょう。
これも最初の章で説明した内容と被るのですが、「他」を「ほか」と読むことが認められたのは平成22年の常用漢字表の改定の時で、元々「ほか」という読みはありませんでした。
例えば
- あかの他人
- その他大勢
- 顧みて他を言う
など「他」を漢字で使う表現や使用例はありますが、いずれも「た」と読むのが正解です。
諺もいくつかありますが、ほぼ全て「他人」(たにん)という熟語で使われています。
「他」の意味と使い方を詳しく!
「他」の意味をわかりやすく説明すると、「別の、自分以外の、それとは異なる」です。反対語は「自分の」を意味する言葉なので、「自」となります。
つまり「他○○」と書かれていたら、「別の○○」と言い換えられます。
「あかの他人」ということは、「別の人」と言い換えても通じるね。
「ほかの」という言葉を「別の」と言い換えて意味が通じるようであれば、「他」という漢字で表現してもいいことになります。
- ほかの地域 → 他の地域
- ほかの学校 → 他の学校
- ほかの選択肢 → 他の選択肢
ただし最初の章でも触れたように、基本的には「ほかの」と書かれていても、無理矢理「他の」と書く必要はないです。
※そもそも「他の学校」とか書かれても、「たの学校」と読む場合が多いです。
上記のように「別の」と言い換えられる単純なケースであれば問題ないですが、例えば以下の様なケースだと使い分けが難しいとも言えます。
- 継続するほかない
- ほかでもない○○
- ○○にほかならない
「外」の意味と使い方を詳しく!
「外」の意味をわかりやすく説明すると、「その範囲をこえた部分」となります。反対語は「ある範囲の中」を意味する言葉なので、「内」となります。
さてここでもう一度内閣が公開した平成22年度の訓令を見てみましょう。
「一部例外として「外」を用いることとする。」とありますが、実は漢字の「外」に限って言えばOKと国が認めているのです。
例えば「高橋部長ほか3名」というように、「ある人物に加えて数名の人がいる」というケースです。
上の文章では「高橋部長に加えて(プラスして)3名がいる」という意味になりますね。
「外」の元々の意味が「その範囲を越えた部分」なので、この意味も納得いただけると思います。
よって「高橋部長外3名」で表記できます。
「高橋部長他3名」としてしまうと、「高橋部長別の3名」で意味的に凄くおかしくなっちゃうね。
特殊な慣用句は「外」でOK!
「ある人物に加えて数名の人がいる」というケース以外にも、「ほか」を「外」で表記して問題ないケースはいくつかあります。
例えば
- 殊の外(ことのほか)
- 以ての外(もってのほか)
- 恋は思案の外(こいはしあんのほか)
などの慣用句は、いずれも「外」で表現されます。
goo辞書を見ても、上の2つの慣用句はそれぞれ漢字表記されています。
意味はそれぞれ、
- 予想とは大きく違っている、予想外な
- 予想を越えて程度がはなはだしい
- 恋は常識や理屈の予想を越えるもので、理性を失わせるもの
となりますが、「その範囲を越えた部分」を意味する「外」の意味通りになっています。
冒頭でも紹介した「もってのほか」を、「もっての他」と書くと「予想を越えて別の」というおかしくな意味になりますから、「外」という漢字が適していることがわかりますね。
今まで「ことのそと」とか「もってのそと」とか読んでいたよ(笑)
明確に使い分けなければいけないことはない?
日常で「ほか」を平仮名で表記し、明確に「他」と「外」と使い分けている人は現在では少ないですね。
というより「ほか」を「外」ではなく、「他」で表記する方が一般化しているように思います。
ただ慣用句でもわかるように、「ほか」に該当する漢字は元々「外」でした。
一体いつ頃から混同されるようになったのでしょうか?
これについては諸説言われていて、ハッキリとした説は正直わかりません。
ここで誤解してはいけないのは、内閣が示した訓令は、法的な意味を持つ重要な文書や、ビジネスなどで使用される文書などに限られるということです。
日常生活や雑誌、普通の本、読書感想文、大学で作成するレポートなどの文章で厳格に使用が禁止されるということはありません。
常用漢字というのはあくまで国が決めたルールに過ぎませんからね。
それにパソコンの入力でも「ほか」と入力したら、普通に「他」が変換候補に現れます。
だけど正しい日本語にこだわるなら、やっぱり使い分けをきっちり理解しておいた方がいいね!
まとめ
今回は漢字の「他」と「外」の違いについてでした!
改めて今回の内容をまとめておきましょう。
- 「ほか」の漢字表記は原則しない。
- 「社長外5名」など、「人数をプラスする」という意味合いの場合は例外的に「外」で表記してもよい。
- 「他」は「別の、異なる」という意味で、「外」は「その範囲を越えた部分」という意味
「ほか」を漢字で表記する場合に「他」と「外」を使っていいのか分かりにくければ、 かな書きで全然OK、ということでもあります。
今回の記事でわかったけど、「外」は「そと」と「ほか」の2つの読みがあるってことだよね。
例えばこんな文章が出たらどう?
家の外に出たら殊の外寒くて、教師外10名ともに家の中に入った。
うわややこしい!