幕の内弁当といえば今や定番の弁当になりましたね。
弁当チェーン店のほっともっとや多くのスーパーやコンビニでも当たり前のように販売されています、筆者も食べる機会は多いです。
しかしよく考えてみたら幕の内弁当ってどうして名前に”幕の内”とついているのでしょうか?
“幕の内”という言葉は相撲の幕内という言葉と似ているので、どことなく相撲が由来なんでしょ?
と思っている方もいらっしゃるのでは?
ところがいろいろと調べてみたら相撲の幕内とはほとんど関係なく、もう一つの日本の伝統文化”歌舞伎“にあったようです。
歌舞伎と幕の内弁当がどう関係しているのか?改めて由来を詳しく探っていきます!
幕の内弁当の名前の由来は?
幕の内弁当の名前の由来は冒頭でもお伝えしたように歌舞伎にあると言われています。
ここでいう”幕の内”(または幕間とも言います)とは歌舞伎の中で設けられる休憩時間のことを指していて、この時間に観客(または役者が)が食べる弁当が幕の内弁当と呼ばれたというのが有力な説です。
“幕”という言葉は歌舞伎で舞台と客席を仕切る定式幕のことを指しています。
歌舞伎の公演時間は非常に長く、休憩を含めても3~4時間もあるそうです。
長いので昼と夜の2部に分かれており、この間に約30分の休憩時間が設けられることになっていますが、この時間がちょうどお昼と重なることから、昔から観客にとっては昼食をとる絶好の間でした。
観客席で食事をとるのは失礼では?
しかしここでふと疑問に思う人もいるでしょう。
そもそも観客席で弁当なんか食べていいの?
国立劇場のページを見てみると、劇場マナーのページにおいて「観客席での飲食は控えるように」と書かれています。
国立劇場 観劇マナー入門 Q&A
国立劇場では幕の内でも観客席ではなくロビーで食事をとった方がいいみたいです、本当に演技を楽しみたいという観客のために臭いを極力出さないようにするのが目的です。
江戸時代は寛容だった?
実は江戸時代では歌舞伎を観る際のマナーはそれほど厳しく注意されなかったのです。
歌舞伎は江戸時代の庶民の娯楽で既に定番でしたが、舞台の演技を見るよりも芝居小屋で「カ・ベ・ス」で楽しむ客もいました。
カ・ベ・スとは菓子・弁当・寿司の3つを指していて、歌舞伎を見ながらこれら3つを食べるのが江戸時代の庶民の楽しみ方だったのです。
現在の基準で考えるならこのような楽しみ方は役者さんに対して無礼だと即怒られるでしょう。
もちろん食べると言っても幕の内に食べるのが礼儀でしたが、それでも待ちきれない客は大勢いました。
中には早朝から芝居小屋に来ていい席を確保している客もいたくらいですからね、お腹も空いていたら休憩時間まで待てません。
そういった半ば無礼な客に対して役者はどう反応したのか?
「俺たちが必死に練習したのに飯なんか食いやがって!!」などと怒ったでしょうか?
実はそうではなく、
「客が食事をとるのを忘れるくらい素晴らしい演技を見せればいい!」
とかなり寛容で余裕があったのです!
これぞまさに役者魂ですね、当時の人々はそれほど自分の演技に自信があったのでしょうか?
確かに本当に魂のこもった素晴らしい演技を披露されたら、客は完全に見とれると思います。
自分は歌舞伎を一度も見たことはありませんが、こういった精神が本当に現在でも受け継がれているのなら生の歌舞伎を見てみようかなとも思いました(;^^
その他の有力な説を紹介!
幕の内弁当の名前の由来は歌舞伎の幕間に観客が食べるようになったからだというのが有力な説です。
しかしいろいろ調べてみたら歌舞伎以外にも名前の由来に関する説はいくつかあります。
実は冒頭でも紹介したように相撲が関係していた説もあったのです。
大相撲の番付の最高階級と言えば幕内ですが、その幕内には様々な力士が出てきます。
一番強いのが横綱で次が大関、関脇、小結、そして前頭と5つの地位がありますが、この内小結はどことなく”おむすび”と響きが似ていますね。
そのため幕の内弁当は、「幕の内力士の小結が食べていたおむすびの入っている弁当」が由来だとする説もあります。
しかしあまり有力視されてはいないようです、小結があまり強くないからでしょうかwww
もう一つの有力説が戦国時代の合戦にありました。
幕の内の”幕”は戦場で武士たちが陣営を張っている幕を意味していたようです。
即ち幕の内弁当は戦場で武士が自軍の陣営内で腹ごしらえのために食べる野戦弁当、または携行食が起源だ、というのも一つの説としてあります。
戦場の幕が舞台の幕と重なったから、芝居見物の際に観客の間で使われるようになったんだろうと言うのもなんとなく納得がいきますね。
幕の内弁当の基本的な型は?
今では日本人の定番の弁当となっている幕の内弁当ですが、よく見てみるとご飯が俵状のおにぎりの形になっているのが多いですね。
なぜご飯がおにぎりなのかと言いますと、顔を真っ白にした歌舞伎役者の化粧が崩れないようにするための工夫だとされています。
確かに俵状であれば口をあんぐりと開ける必要もなく食べられそうです。
実は幕の内弁当は観客が食べる前は役者や裏方スタッフのために作られていたそうで、それが観客向けに登場して発展し規格化されて普及しました。
ご飯が俵状のおにぎりになっているのもこの名残だと言えるのです。
また汁気の少ない食材(焼き魚、玉子焼き、蒲鉾など)が多く使われているのも、観客席で客が膝の上で食べやすいようにという工夫の一つです。
汁気の少ない物なら気楽に膝の上で広げられますからね。
そのため醤油を使って無理矢理濃い味にして食べようというのは、本来やってはいけない行為とも言えます。
まとめ
最後になりますが改めて幕の内弁当の名前の由来についてまとめますと、
- 歌舞伎の幕の内に食べられていたから
- 相撲の幕の内力士が食べていたから
- 戦国武将が戦陣の幕の内側で食べていたから
となりますが、この中でも一番有力なのが歌舞伎説みたいです、参考になりましたら幸いです。
幕の内弁当と言えば栄養的にもバランスが取れた食事だと思っているのですが、最近ではハンバーグや海老フライなどを織り交ぜた洋食風の幕の内弁当も増えてきましたね。
個人的には幕の内弁当は日本独自の伝統文化だと思うので、わざわざ洋風にしなくてもいいんじゃないかと思います。
しかし歌舞伎は海外でも高く注目されているようです、2018年は何と初の海外公演から90年の節目にあたります。
海外で歌舞伎を観る機会があったら洋風幕の内弁当を食べた方がいいですね、売ってあればの話ですが(笑)