和室に欠かせない飾りといえば、掛け軸ですね。
芸術的な絵が描かれていたり、謎の文字が書かれていたり、四字熟語が書かれているなど、見ているとなんだか無意識に高揚します。
ではその掛け軸の正しい数え方をご存知ですか?
掛け軸は文字や絵を書いた紙だから、1枚とかで数えちゃ駄目なの?
日常では和室の割合も減って見る機会も少なくなったがために、数え方がわからない人も増えたかもしれません。
実は掛け軸は特殊な数え方があったみたいです。しかも時と場面、その状態によっても変わります。
ということで、今回は掛け軸の数え方を徹底特集していきましょう!
なんとも意外な助数詞を使うんだよ!
掛け軸の数え方は?
改めて掛け軸の数え方ですが、一つだけではありません。何と時と場面、状態によって、4通りの数え方があるんです!
- 壁に掛けてある時は「幅」または「巾」、読みは「ふ(ぷ)く」:1幅・2幅、1巾・2巾
- 巻かれた状態は「軸」または「本」:1軸・2軸、1本・2本
- 作品・商品として数える場合は「点」:1点・2点
- セットで数える場合は「対」:双対・3巾対
「幅」とか「軸」とか聞いたことないんだけど
なんか聞いたこともない助数詞が並んでいますよね。
実は「1枚」とか「2枚」と数えてはいけないんです!
特に注目すべきは、「幅」という数え方ですが、なぜ「幅」と数えるのか?またほかの数え方についても詳しく見ていきます!
壁に掛けてある時の数え方は「幅」か「巾」!
掛け軸とは通常上の画像のように、壁にかかった縦長の巻物のことです。
このように壁にかかった時の掛け軸の数え方は、「幅(ふく)」または「巾(ふく)」を使って数えます。
「幅」と「巾」も読みは同じです。1から10まで読み方を見ていきましょう。
- 一幅は「いっぷく」
- 二幅は「にふく」
- 三幅は「さんぷく」
- 四幅は「よんぷく」
- 五幅は「ごふく」
- 六幅は「ろっぷく」
- 七幅は「しちふく」
- 八幅は「はっぷく」
- 九幅は「きゅうふく」
- 十幅は「じっぷく」
「ふく」か「ぷく」と数えますが、前の文字が小さい「つ」と「ん」になっている時が「ぷ」に変化します。一と三と四と六と八と十の時が、それに該当します。
もちろん「幅」の部分は「巾」と置き換えても同じです。
ではどうしてこのような数え方をするのでしょうか?
その理由は「幅」という漢字自体が「掛け物」を意味するからです。以下はgoo辞書からの引用です。
[名]床の間に掛けて飾りとする軸物。掛け物。「山水の―」
引用元:goo辞書
恐らくではありますが、単純に考えて壁の飾り付けの中では「幅」を取らせるからではないかと思います。
掛け軸を飾るのは「床の間」と呼ばれる部分ですよね。その床の間の壁に通常飾られるわけですが、掛け軸の理想の幅は床の間の幅の三分の一の長さ、だとされています。
このように「床の間の壁の幅を取らせる」ので、このことから「幅」という字自体が掛け軸そのものを表すようになった、と思われます。
※掛け軸のサイズには様々ありますが、一般的に「尺五幅」と呼ばれるタイプの幅が約55cm、それよりやや小ぶりのサイズだと「尺幅」タイプになり幅は35cmになります。
巻かれた時の数え方は「軸」か「本」!
掛け軸は壁に掛かれた絵画ですが、当然トイレットペーパーみたいにぐるぐる巻にできます。
巻物は中心に棒があって、その棒のことを「軸」と呼んでいます。なのでこの状態の時の掛け軸の数え方は「軸(じく)」となります。
ただし「一軸」の時は、読み方に気をつけてください。「いちじく」ではなく「ひとじく」です、「二軸」は「ふたじく」となります。
「いちじく」だと果物になっちゃうね
巻物になっている時は、その見た目が棒に見えなくもないので、「本(ほん)」を使っても大丈夫です。
また掛け軸を取り扱う業者の間でも、助数詞で「本」を使う人が多いようです。
作品・商品として数える場合は「点」!
掛け軸は床の間に飾られる美術品としても扱われます。
そのため一つの作品として数えられることになるので、この場合は「点(てん)」と数えます。
もちろん商品としても扱われますから、その場合でもやはり「点」と数えます。
- こちらの美術館では、100点の掛け軸が鑑賞できます。
- 掛け軸3点注文いたします。
複数の掛け軸がセットになると「対」!
二幅、三幅など複数の掛け軸がセットになると、「対(つい)」という単位で数えます。
対巾または双巾 | ついふく そうふく | 二巾セット:鶴と亀が描かれている場合が多い |
三巾対 | さんぷくつい | 三巾セット:松竹梅の絵、鶴と亀と老人の絵が描かれている場合が多い |
四巾対 | よんぷくつい | 四巾セット:春夏秋冬、四季物の絵など |
十二巾 | じゅうにふくつい | 十二巾セット:十二支の絵、一年中二ヶ月の絵など |
対に関してはこれらのパターンが多いです。
二巾セットの時は「二巾対(にふくつい)」とは言わず、「対巾」もしくは「双巾」と数えますね。
これより多い三十巾対や五十巾対などもあるようですが、滅多に見ることはありません。
仮にあったとしたら一巾30cm、隣の掛け軸との間隔が20cmと仮定すると、25mプールの長さに匹敵する壁に掛けられていることになります。
その他和室にある物の数え方
和室にある物は掛け軸だけではありません。和室に欠かせない飾り物や建具の数え方の一例をご紹介していきます。
屏風の数え方
部屋の仕切りや装飾に用いる調度品です。
その形状から「枚」と数えそうですが、実は「隻(せき)」という助数詞を用いて、「一隻(いっせき)」と数えます。
二隻で一組の場合は「一双(いっそう)」と数えます。
刀の数え方
こちらも床の間に飾ってあることが多いです。
侍魂を引き立たせますが、数え方はその形状から「本(ほん)」を使います。
しかし、「振り(ふり)」という助数詞を用いて、「一振り」と数えることもあります。
ふすまの数え方
和室と和室の間の仕切りとして用いられる建具です。
完成したふすまは「枚(まい)」を使って数えるのが一般的です。
しかし稀にですが、「本(ほん)」や「領(りょう)」で数えることもあります。
しょうじの数え方
外の明かりを通すように作られた建具です。
数え方は「枚(まい)」や「本(ほん)」のほかに、「面(めん)」を使うこともあります。
壺の数え方
日本の芸術作品としては壺も欠かせないでしょう、綺麗な花が入っているとさらに心が和みます。
ただし意外なことに数え方が豊富で、「個(こ)」・「口(こう)」・「点(てん)」・「客(きゃく)」・「壺(つぼ)」と5つの単位があります。
特に「口」とか「客」って数え方が独特ですね。和室に来て壺が2つある時、「この部屋には2口(2客)の壺があります」といえば、女将さんから褒められるかもしれません。
まとめ
今回は掛け軸の数え方の紹介でした。それではまとめといきましょう!
- 壁に掛けてある時の数え方は「幅」か「巾」、読みは「ふく」か「ぷく」
- グルグル巻にした時は「軸」か「本」、「一軸」は「ひとじく」と読む
- 作品や商品として数える時は「点」
- 複数の掛け軸をセットにして数える時は「対」
- 対巾(双巾)、三巾対、四巾対、十二巾対などがある
- 掛け軸業者の間では「本」を使うことが多い
- 「枚」で数えることはない
和室に欠かせない飾り物ですが、数え方がわかると、また違った楽しみ方も出てきそうです。
また掛け軸以外にも、屏風や刀、壺なども独特な数え方をします。日本人はいろいろな助数詞を考えるのが本当に好きですね。
その他の気になる物の数え方も、詳しく記事にしてまとめています。興味のある方はぜひ御覧ください!
冬の時に食べる定番の果物といえばみかんですが、そのミカンの数え方を詳しくご存知でしょうか?実は皮を剥く前と後、さらに収穫する前でも変わってきます。詳しく見ていきましょう!