「森」や「犇」など、同じ形の字が3つ並んだ漢字は探せばいくつもあります。
今回ご紹介する漢字もその一つで、「猋」、さてこれ一文字で何と読むでしょう?
うーん、さっぱりわからない。なんだろう?
「犬」が3つ? ってことは、まさかの「ケルベロス」とか?
恐らく初めて見るという人も多いのではないでしょうか?
でも犬が3つだからといって、「ケルベロス」とは読まないんですよ、残念!
ということで「猋」がなんと読むのか、その由来と似ている漢字についても紹介していきましょう!
ヒントは竜巻に似た風の名前だよ!
「猋」の読み方とは?
では正解の発表です。「犬」が3つある「猋」の読みはこうなります。
えっ!?何でそんな読みになるの?
どうです正解できた人いましたか?
動物の「犬」とはほとんど関係なかったですね。
どうしてこういう読みになるのか、また「猋」という漢字の由来も含めて深堀りしてみました!
「猋」の漢字を深堀!
改めて「猋」という漢字について、紹介します。
部首 | 犬 |
画数 | 12 |
訓読み | はし(る) |
音読み | ヒョウ |
意味 | 速く走る。つむじかぜ、激しい突風 |
JIS水準 | その他の漢字 |
漢検レベル | 1級 |
いずれも漢字辞典からの情報です。
漢字検定1級レベルの漢字なので、そう読める人もいないでしょう。
意外にも「はしる」という訓読みまで存在します。そのため「猋る」と表現する場合もあります。
また「猋」一文字だけでなく、「猋風」と書いて「ひょうふう」とも読みます、意味はやはり「つむじ風」です。
「つむじ風」とは?
そもそも「つむじ風」ってどういう意味でしょうか?
「つむじ風」とは「旋風」の一種で、別名「辻風」とも言い、「地表付近の大気が渦巻状に上る突風」となります。
晴天の気象条件下で強風の日中に空き地や田畑、駐車場などのある程度の広さがある場所で発生しやすく、建物に被害を及ぼすことがあります。
風がぐるぐる回っている様子を、昔の人は「何匹もの犬がグルグルと追いかけあって遊んでいる様子」と捉えたことで、「猋」という漢字で表現されるようになったとされています。
「飆」という漢字も?
単に「猋」一文字でも「つむじ風、旋風」を意味しますが、実は「飆」という漢字もあります。
意味と読みは全く同じで「つむじ風」です。
よく見ると「猋」が左側にくっついていますね。それに「風」がくっついているだけなので、意味は実質同じになります。
実は「猋」は単に「つむじかぜ」と入力しても、変換候補に上がってきませんが、「飆」だと候補に上がります。
さらに興味深いことにこれによく似た漢字で「飃」という別字の表記まであります。
「猋」と「飆」と「飃」、3つとも意味と読みは全部同じなんだね
部首が「犬」の漢字とは?
「猋」は部首が「犬へん」の漢字です。
「犬へん」と聞くと少し聞き慣れませんが、実は身近な漢字でも「犬へん」はあったんです。その例を紹介します。
- 状
- 獣
- 献
今回紹介した「猋」のように、同じ漢字が3つも並んだ漢字のことを「品字様」と呼びます。
「品」や「轟」、「森」などがその代表例です。
「七」が3つ並んだ「㐂」という漢字もその一つです、詳しくは以下の記事を参照ください!
七が3つある「㐂」という漢字。滅多に見る機会はありませんが、いざ見かけたらどう読むかわからないですよね。どう読むのか、またそもそもどの漢字が元になっているのか、由来と入力方法を詳しく調べてみました!
おまけ:名前の漢字で使える?
「猋」という漢字は珍しいのですが、人名に使えるのか疑問ですよね。
結論から言うと、答えはNOになります。
その証拠に、法務省が定めた人名用漢字一覧表の画数12の中に、「猋」は入っていません。
また「猋」と同じ意味の「飆」と「飃」もやはり入っていません。
つまり子供の名前に「猋」や「飆」、「飃」という漢字をつけても、役所で受理されないことになります。
仮に子供に「つむじかぜ」という名前をつけたいなら、常用漢字の「旋風」と付けるしかありません。
この2文字でも「つむじかぜ」と読みます。ただしこれだと「センプウ」と読まれなくもないので、ちょっと微妙かもしれません。
まとめ
今回は「犬」が3つ並んだ漢字「猋」の意味と読み、由来を詳しく見てきました。
- 「猋」の読みは「つむじかぜ」、音読みは「ヒョウ」
- 「猋」という漢字は「数匹の犬がグルグル走り回っている様子」が「つむじ風」に喩えられたから
- 「猋」と同じ読み・意味の漢字に「飆」と「飃」もある
- 部首が「犬」の漢字として、「状」・「獣」・「献」がある
- 常用漢字、人名用漢字としては使えない
今回は以上です。「猋」は読める人は相当少ないはずなので、かなり自慢できるかも知れませんよ。