人の名前の中には、読みは同じで見た目がそっくりでも微妙に違う漢字がいくつもあります。
今回紹介する沙と紗もその一つです。
女子の名前で「沙織」や「紗織」がありますが、2つとも同じ「さおり」と読みます。
「さ」が違う漢字になると、どう意味が変わるんだ?
改めてこの2つの漢字の違い、また名前で用いると意味はどう変わっていくのか、掘り下げていきます!
あなたは「沙織」派?それとも「紗織」派?
「沙」と「紗」の違いとは?
「沙」と「紗」の違いですが、一言で説明するとこうなります。
- 沙:小さい「砂」を意味する常用漢字
- 紗:絹織物を意味する人名用漢字
「沙」は常用漢字、「紗」は人名用漢字だったのです。そして意味まで全然違います!
「紗」が人名用漢字ですが、「沙」も普通に女の子の名前などで用いられます。冒頭でも紹介した「沙織」のほかに「沙羅」、「沙月」などもあって、2つとも人気の漢字です。
もちろん漢字一字で意味がはっきり異なるので、名前で用いても意味は若干異なってきます。
具体的にどう変わってくるのか、「沙」と「紗」の漢字の意味も含めて詳しく見ていきましょう。
「沙」の意味を詳しく!
まず漢字の「沙」について見ていきましょう!
部首 | さんずい |
画数 | 7 |
訓読み | すな |
音読み | サ |
意味 | すな。みぎわ。水で洗って良いものと悪いものを分ける |
漢検レベル | 2級 |
「沙」は漢検2級の常用漢字です。実は漢字の「砂」と意味的にはほぼ一緒で、「さんずい」になったことで「水辺にある細かい砂」を意味します。
「砂漠」を「沙漠(さばく)」と書くこともあります。
「沙」の方が「砂」より目が細かくサラサラしているそうだよ
また「水で洗って悪いものを取り除く」という意味合いもあります。
「音沙汰なし」、「正気の沙汰」、「取り沙汰される」などで使われる時がこの意味に当てはまります。
さらに固有名詞だと、「阿沙流」(あさる)、「毘沙門」(びしゃもん)といった地名のほか、「岩沙(いわさ)」、「沙海(さうみ)」、「沙川(さがわ)」といった名字でも用いられます。
名前として用いる時の意味は?
「沙」という漢字は、「美沙」や「理沙」、「沙帆里」、「沙織」、「沙紀」など女の子の名前として人気が高い漢字です。
「沙織」といえば、元日本バレー代表の「木村沙織」が有名だよね
前述した意味を用いて考えると、「沙」は「細かい砂」でしたね。
そこからの情景を膨らませると、「沙」には
- 夏の澄み切った海と浜辺
- 波打ち際の砂のようのに流されたり踏まれても柔軟に形を変化させる
- 水で洗い悪いものを取り除くように、良いものを見分ける
という思いが込められています。
つまり「沙」を使った名前には、
- 海のように美しく心の広い子
- どんな環境にも変化できる柔軟な子
- 優れたもの、良いもの、美しいものを見分け追い求められる子
- 物事の善悪をちゃんと見極められる力を身につけられる子
に育ってほしいという願いが込められるわけです。
画数7の漢字にもこれだけ奥深い思いがあるとは、少し驚きですね。
「紗」の意味を詳しく!
部首 | いとへん |
画数 | 10 |
訓読み | うすぎぬ |
音読み | サ、シャ |
意味 | 薄い生地の絹織物 |
漢検レベル | 準1級 |
次は「紗」の解説です。「紗」は漢検準1級の人名用漢字です。
画数もやや増えて、常用漢字でもないのでやや難し目な印象があります。
「紗」一文字で「うすぎぬ」という意味になりますが、漢字で「薄衣」と書き、文字通り「薄い生地の衣」となります。
「糸」が「少ない」から「生地が少ない=生地が薄い」になるんだね
また「地が厚くて織り目が目立たない織物」を意味する「羅紗(ラシャ)」という言葉にも用いられます。さらに上等な風呂敷を意味する「袱紗(フクサ)」などもあります。
この「紗」が意味する絹織物は、古来中国で広く普及し、日本にも平安時代から広まりました。生地が薄いことで夏用の着物として利用されていました。
名字だと「平紗(ひらさ)」と用いられますが、あまり見かけない気もします。
名前として用いる時の意味は?
「紗」は人名用漢字なので、やはり女の子の名前として人気があります。
明治安田生命の名前ランキングで、2009年から2015年の7年間、「紗」が含まれた名前はベスト100にずっとランクインしていたほどです。
「紗季」や「紗弥加」、「亜里紗」、「紗奈」、「紗織」などがありますが、実質「沙」と使い方はほぼ変わりません。
「紗季」といえば、女優の「相武紗季」が有名だよね
ただし意味が変わるので、当然のごとく名前としてもどんな願いが込められるかは変わってきます。
「紗」が薄い生地の織物を意味する漢字なことから、それ自体「涼しげ」で「しなやかさ」を兼ね備えています。
そこからのイメージを膨らませると、「紗」を使った名前には、
- 人を優しく包んであげられるような子
- 強さと美しさと靭やかさを兼ね備えた子
- どんな状況にも柔軟に対応できる変化の強い子
に育ってほしいという願いが込められます。
「沙」と比較しましたが、結局どちらも「優しく柔軟に対応できるような子」という意味合いがあり、あまり大差ないような気がします。
まとめ
今回は「沙」と「紗」の違いと、名前に用いた際の意味の違いについて解説してきました。
- 「沙」は、水辺にある細かい「砂」を意味する常用漢字
- 「沙」は「音沙汰」、「正気の沙汰」、「取り沙汰」などで用いられる
- 名前に「沙」を用いると、心が広く、どんな環境にも変化でき、善悪を見極められる力のある子に育ってほしいという願いがある
- 「紗」は、薄い生地の織物を意味する人名用漢字
- 「紗」は「羅紗」、「袱紗」などの言葉で用いられる
- 名前に「紗」を用いると、周囲の人に優しく接することができるような子に育ってほしいという願いがある
今回は以上です。最後までご覧いただきありがとうございます。ぜひ名付けの際の参考にしてみてください!
ほかにも見た目が似ている漢字の違いを記事にしていますので、興味があれば御覧ください!
漢字の「未」と「末」、似た者同士の2文字ですが、書き取りの際に書き間違えやすいと思います。「未開」、「結末」など漢字で書き取る際に、読み方から判断し書き間違えないための覚え方も紹介します。