議院内閣制
学校の社会の授業でこの言葉について、初めて習う人も多いでしょう。
漢字が5文字もあるせいで、難しいイメージがつきまといます。何でこんな難しい言葉が出てくるんだと僕自身も最初戸惑いました。
しかし議院内閣制というのは、日本の政治を支える大事な制度となります。
正式な意味についても学習するとは思いますが、改めてどんな意味の言葉なのでしょうか?
また議院内閣制以外の政治制度となると、大統領制という言葉もありますね。
日本は議院内閣制でアメリカが大統領制を採用していることになるのですが、それぞれの違いとメリット・デメリットは何なのでしょうか?
さらに似たような言葉で半大統領制というのもあります。
ちょっとややこしくなってきましたね(;^^
学校の授業などでもあまり理解できなかった人のために、両者の違いや共通点を、わかりやすく説明していきます。
議院内閣制と大統領制の違いとは?
議院内閣制と大統領制、この2つの制度の違いを一言で説明するとしたら、以下のようになります。
- 議院内閣制とは、政治の最高責任者が議会の選挙で選ばれる
- 大統領制とは、政治の最高責任者が国民の選挙で選ばれる
要するに、政治の最高責任者を議会で選ぶか、国民の選挙で選ぶかの違いです。
日本の政治の最高責任者はご存じ内閣総理大臣ですが、その内閣総理大臣は国会議員の中から選ばれます。
対する大統領制の最高責任者は文字通り大統領ですが、数年に一度ある大統領選挙によって選ばれます。
大統領制を採用している国と言えば、アメリカが有名ですね。
アメリカの大統領は4年に一度の選挙で、再選されるか新しい人を選出するかを決めます。
ただこの選出の方法によって、議院内閣制と大統領制では、政治のトップと議会との間の関係性も大きく違ってくるのです。
次の章から2つの制度について、より詳しく見ていきましょう!
議院内閣制とは?
まずは議院内閣制について見ていきましょう、ここでは一番わかりやすく日本の政治で解説します。
日本は議院内閣制を採用しいますが、これは日本国憲法第66条にその根拠が記されています。
この条文こそが議院内閣制そのものを意味しているのですが、「内閣は国会に対して連帯して責任を負う。」という内容になっています。
前項でも触れましたが、政治のトップである内閣総理大臣を選出するのは、議会に所属する議員から選ばれます。
日本では、内閣総理大臣は国会(日本の議会)から選ばれることになります。
国会議員の中から選ばれるということは、日本国憲法第67条にも書かれています。
国会議員の中から選挙で選ばれるということは、「内閣が国会から信用されて成立した」という見方ができるわけです。
この信用されて成立したという点がまさに重要で、これによって内閣と国会は以下のような関係を保つわけです。
- 国会は内閣を信任するが、信任せず内閣総理大臣を辞めさせることが可能
- 内閣は国会からの信任で成り立つが、総理大臣は国会を解散させることが可能
内閣と国会は密接に関係していて、互いをけん制し合います。
議院内閣制のメリットは?
議院内閣制のメリットは、
- 政権運営が安定させやすい
- 信任に値しない内閣総理大臣を任期中に解任できる
という点です。
内閣総理大臣は、国会議員の投票によって選ばれますが、そうなるとその議会で最大議席を有する党の推薦する候補者が選ばれることがほとんどだからです。
多くの場合、その政党の党首が選ばれます。自民党の場合は総裁となりますね。
内閣総理大臣の出身政党はほぼその議席で最大議席を有する政党となり、これによって内閣総理大臣の方針や政策が安定して行えるわけです。
これぞ多数決の力ということです。
2つ目のメリットは、内閣総理大臣を解任できるという点です。
「あなたの政策はちょっと行きすぎで、国民の大半が不満を抱いています。だから解任ね。」
というわけですね。
ただこれについては成立することはほぼ難しいです。
まず前提として総理大臣が最大議席を有する政党から選出されるわけですが、不信任する際にも、その議会で過半数の賛成を得なければいけません。
つまり最大議席を有する政党の議員の何人かも、賛成しなければ成立しません。
現実的に自分の所属する政党の党首に対して、“NO”の意見をつきつけるだなんて、ほぼ無理な話です。
会社員だと社長に対して「社長、お願いですからやめてください!」と言っているようなものですからね(;^^
議院内閣制のデメリットは?
デメリットとしては、日本みたいに二院制を採用していると、両院で異なった人が内閣総理大臣に選ばれる可能性が出てくる点です。
この場合下院(日本だと衆議院)で指名された人が内閣総理大臣となるわけですが、両院で異なる人が選ばれるということは、上院と下院で最大議席を有する政党が異なることを意味します。
これがいわゆる「ねじれ国会」という現象です。
こうなると法案の成立などがうまくいかず、政治が停滞する恐れも出てきます。
2007~2009年の自民党政権、2010年~2012年の民主党政権時は、このねじれによって政治が停滞する場面が多くありました。
ねじれ国会の状況になると、内閣総理大臣の解任ももしかしたら現実味を帯びてきちゃいますね。
大統領制とは?
次に大統領制について見ていきましょう、一番わかりやすくアメリカの政治で解説します。
アメリカはご存じ大統領制の国で、政治の最高責任者は大統領です。
その大統領を選出するのは、議会によってではなく、国民の選挙で選ばれます。
「誰を大統領にするか?」その決定権が、国民に委ねられているわけです。
日本でも国民による選挙は行われますが、あくまで国会議員を選ぶに過ぎません。
だけどアメリカでは国の政治のトップも国民が選べるんですね。
日本と違って、大統領が国民の選挙で選ばれることにより、政治のトップが議会とは完全に独立した存在なわけです。
ということはつまり、アメリカの大統領は議会に対して責任を負わないんですね。
ここが一番大きな違いです。
日本の議会は内閣総理大臣を途中で辞めさせることも可能だったわけですが、アメリカの場合はそうはいきません。
単に行き過ぎた政策を実行して、議員の間で不満が高まっても、議会で大統領を解任させる手続きは踏めないのです。
これについては大統領の権限が大きいような気がします。
ただし逆に言えば、大統領は議会に対して解散させる権利もなければ、法案を提出することもできません。
お互いに独立していて権限が明確になっており、権力のバランスを保っている形です。
一方日本の内閣総理大臣は、国会に対して解散させる権利もありますし、法案を提出する権利も有します。
日本は内閣と国会が、かなり深いんですね。実質法案の作成もコントロールできるわけです。
またアメリカの大統領は国民の選挙によって選ばれるため、議会の勢力とはほぼ関係ありません。
議会で多数派となっている政党の候補者が選挙で敗れ、少数派の政党の候補者が当選して大統領になる可能性もあります。
この場合日本でいう「ねじれ」状態となるのですが、アメリカの場合では珍しい現象ではないのです。
いくら大統領の権限が強く独立しているとはいえ、大統領が明らかな法律違反や犯罪レベルの騒動を起こしたら話は別です。
その場合は大統領を議会で裁判を行い弾劾、つまり辞めさせることは可能です。
半大統領制とは?
大統領制に似た言葉としてよく取り上げられるのが、半大統領制ですね。
この政治制度を採用している主な国はイタリアとフランスで、大統領もいるのですが、一方で首相もいます。
首相は日本でいう内閣総理大臣に当たります。
つまりイタリアとフランスは、大統領制を採用している一方で議院内閣制も採用しているのです。
これはちょっと変わっていますよね。
だけど憲法上権限が大きいのは大統領のようです。
フランスの場合だと、議会で多数を占める政党から首相が選ばれる点では日本と同じですが、その首相を任命するのは大統領です。
仮に大統領と首相との間で対立関係が大きくなると、国家の運営に大きな支障をきたす可能性もあります。
大統領と首相はどちらも民意を反映していると言えますが、これがフランス政治の大きな落とし穴と言えますね。
まとめ
今回は議院内閣制と大統領制の違いについての解説でした。
改めて今回の内容をまとめさせて頂きます。
- 議院内閣制は政治のトップが議会の選挙で選び、大統領制は政治のトップを国民の選挙で選ぶ
- 議院内閣制は議会が内閣が密接に関係する、議会が政治のトップを解任させることも可能
- 大統領制は議会と大統領が独立している、議会は大統領を解任させることは通常できない
- 半大統領制とは議院内閣制も採用しながら大統領制も採用していること、主にイタリアやフランスが当てはまる
議院内閣制と大統領制の違いを理解すれば、政治のニュースや学校の授業でも大いに役に立ちますよ。