ニュース番組などを見ると、「公益財団法人」だなんていう言葉を聞く機会がありますよね。
漢字が6文字も並んでいて、「まーた難しい言葉使いやがって!」と拒否反応を示す多いのではないでしょうか(笑)
有名な公益財団法人といえば、大相撲を取り仕切る日本相撲協会があります。
一見すると“公益”という言葉がくっついているから、これも結局国の機関か何かだと思いたくなります。
国の機関ということは、やはり公益財団法人で働く職員達は「公務員」と同じ扱いと思っていいのでしょうか?
そもそも公益財団法人って一体どんな法人なんでしょうか?
また似たような言葉でもある公益社団法人の違いについても、詳しく見ていきましょう!
「独立行政法人」とは混同しないようにしよう!
公益財団法人と公務員
公益財団法人とかいう機関で働く職員は公務員か否か?
この答えに対して結論から申すとすれば、NOとなります。
「公益って名前がついているのに公務員じゃないってどういうこと?」
と思う人も出てくるでしょうが、これにはちゃんとした理由があります。
まず公益財団法人と公務員、その両者について違いを一言で表すとこうなります。
- 公益財団法人は公益性の高い民間の法人
- 公務員は国や地方自治体、国際機関などで働く人
つまり公益財団法人は、“公益”とは名ばかりの民間の法人なのです。
“民間”とついているから、当然公務員ではありません。紛らわしいですね(;^^
また税制上の優遇はありますが、税金で運営されているわけではありません。
独立行政法人で働く人は公務員なのか。そう思っている人もいるかもしれませんが、厳密に言えば同じ独立行政法人でも、種類によって公務員か否かが分かれます。果たしてどう違うのでしょうか?詳しく見ていきましょう!
でもそもそも民間の法人なのに、どうして名前に“公益”とつくのでしょうか?
公益財団法人の定義と条件などについて、もう少し詳しく見ていきましょう!
そもそも財団法人って?
公益財団法人がどんな法人か、なぜ誕生したのか?
それについて説明したいのですが、その前にまず財団法人について説明しないといけませんね。
財団法人というのは簡単に言えば、法人格を与えられた財団で、ある特定の個人や企業などから出された財産で設立され、運用した際の利子で事業を実施する法人です。
何かの事業を実施するには、それに伴って人件費などの費用がかかりますよね?
大相撲なら年6回、全国高校野球選手権なら春と夏の2大会、コンサートホールでオーケストラが行う演奏など、とにかくお金がたくさん要ります。
そのたくさん要るお金を工面するために財産自体に法人格を与えて、その後援者から寄付を集めてその利子で賄っているということです。
因みに財団法人を設立するには、最低300万円以上の財産が必要となります。
普通に設立された法人は「一般財団法人」と呼ぶようにしています。
2008年までは公益目的だけの法人でしか認められませんでしたが、法律が改正されたことで2008年12月から公益目的でなくても財団法人が設立できるようになりました。
一般財団法人と公益財団法人の違いとは?
単に何かの事業を行うだけなら、普通に会社を設立して儲けを出して運用したほうがよさそうな気がします。
しかし一般財団法人の行う事業の中には、学生のスポーツの公式試合や音楽の演奏、芸術、文化交流、自然保護、衛生管理など、比較的社会全体の利益が重視で、法人自体は儲かりにくい事業もあります。
そこで利益が出にくいので、国や都道府県が一定の公益性のある事業を執り行う法人の場合は、特別に公益財団法人にすることが決まりました。
公益財団法人に認められる条件は、「公益法人認定法」によって主に以下のように定められています。
- 全事業の内、公益目的で行う事業が50%以上あること
- 赤字などになって財政的に厳しいこと
ここでいう「公益目的で行う事業」とは、学術や文化、福祉、就労支援、公衆衛生、スポーツ、治安維持、開発途上国への国際協力、自然環境保護などの23事業とされています。
公益財団法人の目的は、何といっても「営利を第一に求めない」点にあります。
しかしいくら営利を第一に追求しないとはいえ、運営するのに人件費などどうしてもお金はかかります。
あまりにも財政的に厳しく、例えば赤字が膨れ上がるとそもそも事業自体ができなくなります。
そこでそういった法人に対しては、特別に税の優遇措置を与えることも必要になってくることになります。
例えば2013年に公益財団法人に移行した日本フィルハーモニー交響楽団も、それまでは財政的に危機的な状況でした。
逆に言えば、財政的に厳しくなく余裕の黒字だったら、認定する必要もないわけです。
つまり公益財団法人とは、財団法人の中で元々は一般財団法人だった法人が、公益性が高いと国から認められた法人だということです。
一般財団法人は公益性の高くない事業も含まれるため、全ての事業が課税対象ですが、公益財団法人はあくまで公益性を重視するので、寄付を行う個人や法人も課税の対象にならないこともあります。
- 日本相撲協会:大相撲を取り仕切る
- 日本高等学校野球連盟:高校野球の統括組織
- 全日本大学野球連盟:硬式大学野球の統括組織
- スポーツ安全協会:スポーツに関する安全の確保と傷害への対処を行う団体
- 日本サッカー協会:日本サッカーを統括する団体、通称“JFA”
- NHK交響楽団:日本初のプロオーケストラ、通称“N響”
- 日本フィルハーモニー交響楽団:日本のプロオーケストラ
- 国際科学振興財団:社会の発展のための研究と国際交流を促進するための団体
- 大阪国際交流センター:大阪市が設立した法人で、大阪国際交流センターホテルを併設している
- 国際文化会館:国際間で文化交流したり知的に協力することを促進する法人
- 日本美術協会:日本の伝統絵画を保存することに取り組む財団
- 日本キリスト教文化協会:キリスト教思想の普及や文化の向上に取り組む財団
- 日本野鳥の会:主に自然保護を目的とした財団
- 放送文化基金:放送技術や放送文化の向上に取り組む財団
- トヨタ財団:トヨタ自動車によって設立された財団
こうしてみると、「○○財団」とか「○○協会」、「○○連盟」とついている名称が多いですね。
中でもスポーツ関係は本当に多くて、各スポーツに1つはあるといっても過言ではないくらいです。
その他の公益財団法人について、どんな種類があるのか知りたい方は、以下のWikipediaのページにほぼ網羅されています。
公益財団法人 (内閣総理大臣認定)
おまけ:公益社団法人との違いは?
実は似たような言葉で「公益社団法人」ていうのもありますね。
この言葉もニュースなどに登場する機会はありますが、公益財団法人とどう違うのでしょうか?
単に「財団」と「社団」になっているだけですね。
社団法人というのは、簡単に言えば人の集合に法人格を与えた法人のことです。
財団法人が、財産に法人格を与えた法人なので、ほぼ対義語となるわけです。
そして社団法人にも、やはり一般社団法人と公益社団法人に分かれます。
公益社団法人とは、元々一般社団法人だった法人が、公益性が高いと国から認められた法人のことです。
条件についてもやはり公益財団法人と同じです。
まとめ
今回は公益財団法人と公務員の違いについて解説しました。
それでは今回の内容のおさらいと行きましょう。
- 公益財団法人は公益性が高い民間の法人、公務員は国や地方自治体、国際機関で働く人
- 公益財団法人は特別に公益性が高く財政的に厳しい条件だと認定される
- 公益財団法人と公益社団法人は財産に法人格があるか、人の集合に法人格があるかの違い
就職パンフレットなどに公益財団法人の募集要項があっても、公務員ではないので注意しましょう!
もちろんほぼ公務員とみなせる仕事ではあります、国からの天下りが多いみたいですし。
ただ元々が民間の法人だったこともあって、給料や待遇面では本物の公務員よりは落ちてしまうでしょう。