2017年の憲法記念日に安倍総理大臣がビデオメッセージと言う形で憲法改正への思いを語りました。

現職の総理大臣がこのような形で憲法改正の悲願を訴えるのは異例なことです。現憲法が施工されてから70年経っていますが、改めて憲法改正への動きが着実に進んでいる気がします。





しかしそもそも現政権がこれほど日本国憲法の改正にこだわる理由はどこにあるのでしょうか?

日本国憲法は過去に一度も改正されず、保守派や右翼思想の人達からは何度も改正を唱える声が挙がってきていて、護憲派の人達と対立する構造は昔から変わっていません。


基本的に日本では改憲派=右派、護憲派=左派、という構図になっています。

憲法とは国の最高法規に当たる根本法なわけですが、日本国憲法は自衛隊の意義、改正用件の厳しさ、緊急事態条項がない、など改正すべき点が多いとも言われています。

また日本国憲法はどういった経緯で制定されたのか?改めてわかりやすく解説していきます!
 

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改めて振り返る日本国憲法制定の経緯

現在の日本国憲法が施行されたのが今から70年前の5月3日、当時日本は戦争に負けてGHQに占領されていた時期になります。

この時にGHQの記述した原案を基にして作成されたのが現在の日本国憲法とされています。俗にいう押し付け憲法論という名前はここから来ています。

当時のGHQの最高司令官だったマッカーサーが作成したのでマッカーサー草案とも呼ばれていますが、起草に当たってはアメリカ合衆国憲法他世界各国の憲法が参考にされています。


この草案を日本語にそのまま和訳した形が今の日本国憲法の前文なわけですが、英文をそのまま和訳したので日本語的におかしい表現になっている箇所もあります。

例えば前文に書かれている

人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して

という部分がありますが、「公正と信義に信頼して」という表現は、正しくは「公正と信義信頼して」にするべきでしょう。

現代日本語でも「~を信頼する」とは言いますが、「~に信頼する」という言い方はしませんよね?


たった一文字の助詞の誤りではありますが、当時の英文の中には普段の日本語でまず使用しない難しい単語も含まれていました。

そうした難解な単語を無理矢理日本語訳したために、こうした弊害が生まれたわけです。


そもそも前文自体難しい言い回しが多く、意味が取り辛い文章になっていることも問題ですね。小・中学校の社会の授業で、理解しにくかった人は多いでしょう。
 

大日本帝国憲法との違いは?

それまでの日本の最高法規は大日本帝国憲法でした。これは明治時代に制定された憲法ですが、この憲法では言論の自由や宗教の自由と言った基本的人権に関して軽視されていました。

特に言論に関しては明治時代に厳しく制限されていて、集会を開いて政府を批判するなんていうこともできない世の中でした。

そうした言論弾圧や思想の制限などは近代国家の姿としてふさわしくないとして、基本的人権を尊重する憲法に改正すべきだという要請が強くあったため占領時に新しい憲法を制定することになったわけです。
 

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現憲法の問題点・改正すべき点を簡単に解説!

日本国憲法が制定されたのが今から70年も前になりますが、半世紀以上も憲法が改正されていない状態が続いています。

普通の法律であれば国民の価値観の変化などでその時代に沿った内容に改正されるのは当然のように行われていますが、あまりにも長い間改正されていないのでいろいろな不都合な点も出始めています。

  • 憲法9条
  • 憲法の改正要件
  • 緊急事態条項の設置

これら3点が主に改正及び追加すべき主要な論点となっていますが、それぞれの問題点や批判などを簡単にまとめてみました。
 

憲法9条の合憲性

現憲法で真っ先に改正すべき点として挙げられるのは憲法9条です。

学校の授業でも習いますが、日本国憲法が平和憲法として崇められているのはこの憲法9条があってこそだと言われています。

  1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

国際平和を掲げ、他国と戦争する軍隊を保持しないということが明記されています。

しかしこの文言は明らかにおかしいですよね?

 
なぜなら今の日本には自衛隊という立派な軍隊がいます。

自衛隊は合憲である、なぜなら日本国憲法は交戦権の否定こそ明記しているが自衛権の放棄までは定めていない。その自衛権の裏付けとなる自衛のための必要最低限度の戦力は憲法第9条第2項にいう”戦力”には該当しない。

というのが日本政府の見解ですが、傍から見ればこれはご都合主義とも取れます。

 
憲法にはっきりと「戦力を保持しない」と書かれているじゃないか!

ということで憲法違反だという意見も多数あります。しかしそれだと他国が日本を攻めてきた時に対処のしようがないですよね?

このため自衛隊は軍隊ではなくあくまで自衛のための実力組織である、という解釈にして自衛隊を軍隊として公言せず憲法には違反しないという立場をとっています。しかし国際法上は立派に軍隊として扱われています。

(例えば1994年に発足した村山政権は左派の日本社会党出身でしたが、政権発足後に従来掲げてきた自衛隊違憲論から自衛隊合憲論へと主張を転換しました。)


そもそもこの憲法9条は日本を非武装国家として独立させる、という戦勝国(主にアメリカ)の狙いがあったわけですが、第二次世界大戦後まもなく東西冷戦、そして1950年に朝鮮戦争が勃発したことで、日本を非武装のままにしておくには不都合な国際情勢になってきました。

そのため急遽、警察予備隊(後の自衛隊)を設置して非武装状態を解除したわけです。

たった数年で憲法に書かれた条項と矛盾したことを日本にやらせるという、なんともご都合的な政策ですね。
 

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96条の改正条件が厳しすぎる!

次に改正すべき点として挙げられるのは、憲法改正の条件が厳しすぎるという点です。

日本国憲法第96条には憲法改正の手続きについて規定されています。

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。

各議院とは衆議院と参議院の2院にあたるわけですが、この2つの院で3分の2以上の賛成を経なければ改正の発議すらできないのが今の日本国憲法です。制定から70年以上もわたって一度も改正されていないのはこの改正条件の厳しさが理由の一つともいえます。

憲法は国の最高法規に当たり、法律でも憲法に違反することがないようにしなければいけないため、安易に改正されることがないようにしているのが理由にありますが、あまりにも厳しすぎるという批判もあります。

 
実は国会で行うのはあくまでも発議なので、最終的に改正されるのは国民投票で過半数の賛成を得た時のみです。国民主権の観点から言えば、国会で憲法の発議すらできないというのはおかしいので、せめて参議院だけでも過半数に緩和するべきだという意見があります。

ただし今の国会議員の内訳を見てみると、実は憲法改正を訴えている国会議員の数がかなり多く改正用件を満たしているという見方もあります。施行から70年経ってようやく憲法改正が現実味を帯びてきたと言えます。

(因みに日本と同様改正の要件が厳しいとされるアメリカの憲法はこれまでに何度も改正されています。)
 

緊急事態条項がない!

現憲法に記述されていない重要な事柄として、国家の緊急事態条項について書かれていないという点があります。

緊急事態条項って何?という方に説明しますと、簡単に言えば国家が大きな非常事態に直面した時に中央政府、首相の権限を著しく強化できる権限のことです。

 
実は自民党による憲法改正論議で頻繁に取り上げられている内容で、新憲法に盛り込むべきだという意見がありますが、反対意見もかなり多いです。なぜなら非常事態という文言を利用して、完全に政府の思うがまま国民をコントロールできてしまうという恐れがあるからです。

政府の命令には絶対に従わなければいけないと言う点に恐怖を抱いている人が多いみたいです。外出禁止令やインターネットの閲覧すら禁止されてしまう、つまり普通の私生活を送れないという考えにまで拡大解釈してしまってある意味9条の改正よりも恐ろしいという考えが広まっています。


そもそも国家の存亡に関わるような非常事態なんて滅多に起きることはないですが、例えば東日本大震災のような巨大な災害が起きた時には政府が迅速に対応して、一刻も早く国民の命を救出しなければいけないというのは当然の考えです。

また最近では北朝鮮のミサイルが日本近海に落下するというニュースを良く聞きますが、いつ何時北朝鮮のミサイルが日本の本土に落下するかもしれません。

こういった事態が起きれば平常運転ができず通常の生活ができない人が多くなるので、やむを得ないという見方もあります。緊急事態条項は諸外国では当たり前のように存在しますが、戦争を長年経験していないということもあってこういう批判論が根強くあるわけです。
 

まとめ

歴代の自民党政権がずっと敬遠してきた憲法改正論議が安倍政権になって本格化してきて言って、憲法改正を主張する国会議員の数も以前よりも多くなっています。

早ければ今年の臨時国会にも憲法改正草案を提出する動きがあるようですが、先の都議選で惨敗した自民党で改正に踏み切る動きに鈍りが出てきたようです。

 
憲法については良く知らない国民も多く改正の必要性もまだ理解が広まっていないかもしれません。しかし国民主権の観点から言えばいずれ国民投票で憲法改正するべきというのが民主主義国家としての在り方だと言えます。
 

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