学校の社会の授業で日本の政治制度について初めて習う人も多いでしょう。
日本の政治と言えば、ニュース番組などでも度々「内閣総理大臣」、「国会」、「日本国憲法」などいろいろ出てきますが、小学校や中学校の授業で改めてそういった用語については学習します。
その中でも特に「議院内閣制」という言葉は、初めて習った時にはわかり辛いですよね。
漢字が5文字もあるから、凄く難しいイメージがあるよね。どうしてこんなわかりにくい表現にしたんだろう?
確かに。だけど議院内閣制とは日本の政治を支える大事な制度なんだ!
学校の社会の授業で正式な意味についても学習しますが、改めてどんな意味か詳しく解説できるでしょうか?
ということで、改めて今回は議院内閣制の定義と仕組みをわかりやすく説明していきます。
また合わせて日本の議院内閣制に関わる問題点についても、簡単にですが触れていくことにします。
議院内閣制とは?
日本の政治の根幹ともなっている議院内閣制ですが、その意味をわかりやすく一言で解説するとしたら、以下のようになります。
内閣が国会の信用を得ることで成立し、お仕事をする制度
物凄くザックリ説明するとこうなります。
一応正式な言葉の定義も紹介しますね。
内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。
引用元:Wikipedia
これは日本国憲法第66条の文章をそのまま引用した形ですが、この条文こそが議院内閣制そのものを意味しています。
3番目に書かれた「国会に対して連帯して責任を負ふ。」の部分がまさにそうです。
わかりにくい表現ですが、国会と内閣は以下のような関係性を保っています。
- 内閣は国会議員によって成立し、国会を解散させることが可能
- 国会は内閣総理大臣を指名し、信任に値しなければ辞めさせることも可能
すなわち日本では内閣と国会は互いに関係性を保っているわけですね。
ここからはもう少し詳しく、議院内閣制の仕組みについて解説していきます!
日本の議院内閣制の仕組み
日本における議院内閣制は、先にも説明した通り憲法第66条にその根拠が書かれています。
因みに日本で言う議院とは「国会」を指します。
議院内閣制を図で表現しますと上のようになります。
「国会から信任されて成立する」というのは、即ち日本国民によって選んだ国会議員の中から内閣で働く人を選出する、ということを意味します。
日本は言わずと知れた民主主義の国ですね。民主主義の国では、定期的に選挙が行われます。
最近では2,3年に一回のペースで何らかの選挙が行われることが多いですが、国会議員を選ぶ選挙は主に衆議院の解散選挙と参議院選挙の2つとなります。
この2つの選挙で選ばれた国会議員の中から、指名選挙で内閣総理大臣を選出し、その内閣総理大臣が内閣に就く大臣(閣僚のこと)をさらに選んでいく、という流れになっています。
この内閣総理大臣の指名についても、日本国憲法第67条に書かれています。
そして「内閣総理大臣が国務大臣を任命する」とも書かれていますが、その国務大臣も過半数は国会議員の中から選ばれないといけません。
これは日本国憲法第68条に書かれています。
内閣不信任決議とは?
国会は内閣のことを信任していて見守るような形を取るわけですが、その内閣の運営があまりにもひどく国民の意志に反するようなことをした場合は、国会が内閣を不信任することもできます。
ちょっとあなたのやり方横暴すぎるんだけど。
そんなこと言われてもこれも国際平和のためだ!
仕方ない。それなら不信任だ!
これが内閣不信任決議です。日本国憲法第69条に書かれています。
この決議が提出され過半数の議員で賛成された場合は、内閣は10日以内に衆議院を解散するか、総辞職をしなければいけません。
このように内閣は国会の信頼を得て成立し運営する運びとはなっていますが、「信任に値しない」と国会から判断されれば、不信任決議を提出して内閣に対して圧力をかけられます。
またこの不信任決議は提出できるのは国会でも衆議院限定で、参議院では提出できません。
ただし内閣不信任決議が内閣の暴走を止めるためのブレーキ役とも言えますが、現在ではこれがほとんど機能していないとも言われているのが現状です。それについては記事の後半で述べますね。
国会は2つあるけれど?
日本の国会は衆議院と参議院の2つの議院で分かれていますね。
通称「二院制」と呼ばれているものですが、日本の議院内閣制では特に「衆議院」の意志を尊重している傾向が強いです。
その証拠は同じく憲法第67条に書かれていることですが、例えば衆議院でAという人が過半数の人から指名されたとします。
つまり衆議院ではAさんが総理大臣ということですね。
しかし参議院では、違うBという人が過半数の人から指名されたとすると、参議院ではBさんが総理大臣ということになります。
このように衆議院と参議院で異なる人が総理大臣に指名されるということは、起こりえない事ではありません。
現に日本の政治史上、これまで衆議院と参議院で指名が不一致になった例は、5回ほどあります。
ここでは詳しい説明は省きますが、こういった事態が起きると総理大臣が2人になってしまいますね(;^^)
そんなことはあってはいけないので、異なる指名がされた時は例外的に衆議院の指名を優先する制度が設けられています。
これを「衆議院の優越」と言います。
すなわち内閣総理大臣は、実質衆議院で過半数の指名を受けた国会議員がなる、と言っても過言ではありません。
これにより、日本の議院内閣制は、特に衆議院との間でのみ成立していると批判されています。内閣不信任決議が提出されるのも、やはり衆議院だけです。
この点を考慮しても、やはり衆議院の選挙の結果で示される民意の方が強いことにもなりますので、衆議院の意志が優先されるということです。
参議院にも似たような制度がある?
一方の参議院では不信任決議はありませんが、似たような制度として「問責決議」があります。
この問責決議は、内閣総理大臣のみならず各国務大臣にも出せるような形になりますが、衆議院の不信任決議と違って仮に過半数の賛成を得ても、「内閣総辞職をしなければいけない」という法的な意味は全くありません。
実質的には野党側のパフォーマンスに過ぎなかったり、単に議事を妨害したいだけという見方もあります。
不信任案が成立することは少ない?
先ほど「内閣が国会から信任に値しない」と判断されれば、国会側から内閣不信任決議案を提出すると説明しました。
しかしこの内閣不信任決議が成立することは、実はほとんどありません。
戦後の政治史上、この内閣不信任決議案が衆議院に提出されたことは何回もありますが、最後に可決したのが1993年の宮沢内閣の時で、それを含めてもたった4回しかありません。
- 1回目:1948年12月23日 第2次吉田内閣
- 2回目:1953年12月23日 第4次吉田内閣
- 3回目:1980年5月16日 第2次大平内閣
- 4回目:1993年6月18日 宮沢内閣
なぜ成立することが少ないかと言いますと、現在の内閣総理大臣は、衆議院で最も多くの議席を有する政党の党首が選ばれているからです。
現在の日本の総理は安倍さんですが、自由民主党の総裁でもあります。
自由民主党は現在衆議院で最も多くの議席を有する政党で、過半数を占めています。自民党の議員は党首(リーダー)をこれまでずっと、内閣総理大臣に指名してきたわけです。
いつからこういったことが慣習化されたのかは定かではありません、暗黙の了解みたいなやつですね。
不信任に賛成することは裏切るということ!
もし内閣不信任決議を成立させるとしたら、衆議院で過半数の賛成を得なくてはいけないわけです。
そのためにはその時点で。過半数の議席を有している政党に所属する国会議員の何名かが、賛成票を投じないと成立しませんね。
言い換えれば、自分達で選んだリーダーを自分達で改めて否定することを意味します。いわば裏切り行為です!
政党といえどいろいろな考えを持った人が集まった集合体ですから、意見の食い違いや価値観のギャップが生じてしまいます。
だけどその政党のリーダーを批判したり反対する国会議員を、次の選挙で国民がどう見るでしょうか?
恐らく勇敢な人というより、自分の党の方針に従わない身勝手な議員とみなされる可能性が高いです。そうなると当選できなくなります。
そうなると内閣総理大臣が党首となっている政党の議員が、不信任案にやすやすと賛成なんかできません。
こうしたことが原因で、内閣不信任案の成立が起こりづらくなっているのです。
日本の議院内閣制の大きな問題点ともいえるんだよね。
議院内閣制を採用している国々とは?
さてこれまでは日本の政治における議院内閣制について詳しく見ていきました。
ただ海外に目を見渡せば、実は日本と同じ議院内閣制を採用している国はいくつあるか気になりますね。
ということでザックリとですが、主に議院内閣制を採用している国を見ていきます。
- イギリス
- ドイツ
- スペイン
- オランダ
- ベルギー
- カナダ
- タイ
- イスラエル
こうしてみると主にヨーロッパの国々に多いですね。
それもそのはずで議院内閣制の起源はイギリスにあるからです。
そしてその政治制度をアジアで初めて真似た国が日本になります。
東南アジアの中で議院内閣制の国は、タイ、カンボジア、マレーシア、ブータンなどがありますが、いずれも日本と同じ立憲君主制です。
ところがアフリカの国々や中央アジア、ロシア、韓国、フィリピン、インドネシア、南アメリカの国々、アメリカなどは議院内閣制を採用していません。
これらの国々では後述する大統領制を採用しています。むしろ世界全体で見ると議院内閣制の方が少数ですね。
議院内閣制と大統領制の違いとは?
さて議院内閣制と関連する用語して大統領制が出てきましたが、アメリカをはじめ世界の多くの国で採用されている制度です。
日本の隣国である韓国も同様ですね。
この大統領制ですが、簡単に言えば政治のトップを国民が選ぶ政治制度という意味です。
日本では政治のトップは内閣総理大臣にあたりますが、大統領制の国々では文字通り大統領がトップになります。
その大統領は数年に一度の国民選挙で選ばれます。アメリカを例にすると、4年に一度大統領選挙が行われますね。
議院内閣制の内閣総理大臣が国会議員の中から選出されるのに対して、大統領制は国民が直接選ぶことができるのが大きな違いですね。
極端な話、議会の中で最も少数な政党の候補者が大統領になる可能性もあるわけです。
この場合、日本でいうねじれ国会という現象が発生しやすくなります。
もちろん議会に所属する議員も大勢いて、日本と同じ政党は組んではいますが、政党はあくまで大統領の候補者しか決められません。
最終的な決定権は国民にあります。
大統領というのは議会(日本でいう国会)に対して、責任を負いませんし、信任もされません。
議会も大統領を辞めさせることは原則できません。
大統領と議会がお互いに独立している、これが大統領制の特徴です。
ところが実は大統領も首相も両方いる国もあるんだよ。それについても以下の記事で詳しくまとめているからぜひ見てね。
日本の政治制度を支えるのが議院内閣制ですが、一方で諸外国では大統領制を採用する国も多いです。両者の違いって何なのでしょうか?双方の特徴と、一部の国にある半大統領制についても紹介していきます。
まとめ
今回は日本の議院内閣制について掘り下げていきました!
それでは改めて今回の内容をまとめさせて頂きます。
- 議院内閣制とは「内閣が国会から信頼されて成立し、仕事をする制度」のこと
- 総理大臣と大臣の過半数が国会議員から選出されて、内閣が構成される
- 内閣が信任に値しないと判断されれば、国会が内閣不信任決議を提出することもできる
- 現在の日本は、衆議院で過半数の議席を占める政党のリーダーが総理大臣になるため、不信任決議が成立することはほぼ不可能
- 議院内閣制を採用している国は主にヨーロッパに多い
- 大統領制は議院内閣制と違って政治のトップを国民が選ぶ制度
議院内閣制の意味や問題点を理解すれば、今後の政治ニュースもより頭に入りやすいでしょう。
また学校のテスト対策にもぜひ役立ててください♪
どうでもいいけど「議院」を「議員」って書き間違えやすいよね。
まず漢字の書き取りからマスターしないと。