「森」や「晶」など、同じ形の字が3つ並んだ漢字は探せばいくつもあります。
今回ご紹介する漢字もその一つで、「犇」、送り仮名に「く」をつけて「犇く」と書きますが、さて何と読むでしょう?
うーん、「おののく」かな?
動物の「牛」が関係してるのかも?「うしめく」かな?
なんとなく読めそうで読めない字ではあります。多分答えを知ったら「あーなるほど!」と反応する人は多いでしょう。
またこの漢字の由来についても深く掘り下げていきましょう!
実は「うしめく」は凄く惜しい答えなんだよ!
「犇く」の読み方とは?
それでは正解の発表です。「犇(く)」」の読みはこうなります。
あー、確かにそれっぽい読みだ!
どうです正解できた人いましたか?
どうしてこういう読みになるのか、また「犇」という漢字の由来も含めてちょっと深堀りしてみました!
「犇」の漢字を深堀!
改めて「犇」という漢字について、紹介します。
部首 | 牛 |
画数 | 12 |
訓読み | ひしめ(く)、はし(る) |
音読み | ホン |
意味 | 慌てて走る、多くの人が隙間なく集まる |
JIS水準 | JIS第2水準 |
漢検レベル | 1級 |
いずれも漢字辞典からの情報です。
漢字検定1級レベルの漢字なので、そう読める人もいないでしょう。
しかし意外にも、「はしる」という訓読みまであるんです。そのため「犇る」と表現する場合もあります。
また「犇々」と書いて「ひしひし」とも読みます。
「犇」から派生した漢字が「奔」なんだ!見た目は確かに似てるね
「牛」が2つ並んだ漢字もある?
因みに牛が2つ並んだ「牪」という漢字もあります。
「牡」や「牝」に似ていますが、間違えないように!
「ゲン」と読みますが、この漢字は環境依存文字であり、漢字検定でも習得しないので、ほぼ使われない漢字です。
今回紹介した「犇」のように、同じ漢字が3つも並んだ漢字のことを「品字様」と呼びます。
「品」や「轟」、「森」などがその代表例です。
「犬」が3つ並んだ「猋」という漢字もその一つです、詳しくは以下の記事を参照ください!
犬が3つある「猋」という漢字。滅多に見る機会はありませんが、なかなか意外な読みをする漢字ではあります。実はある風の名前と関係あるのですが、なぜそう読むのか。由来も含めて詳しく紹介します!
「ひしめく」の意味を考えよう!
「犇」の漢字について説明してきましたが、読みが「ひしめく」になるのはどうしてでしょうか?
ここで本来の「ひしめく」の意味を考えましょう!
「ひしめく」の意味とは「大勢の人が一箇所に集まって、ぎゅうぎゅうと混み合っている様子」となります。
「犇」という漢字を構成しているのは「牛」ですが、この「牛」が3匹集まっている様子が「ひしめき合っている」ように見えることから、「犇く=ひしめく」となったわけです。
因みに「犇々と」は「ひしひしと」と読みますが、意味は「隙間がないほど詰まっている」あるいは「余裕がないほど緊迫している」となり、やはり「犇」の漢字を2回並べて表現すると納得できますね。
書き順には要注意!
読みだけでなく、万が一「「ひしめく」を漢字で書きなさい。」と出題されたら、どう書きますか?
単純に「牛」を3つ書けばいいんじゃないの?
はい、確かに「牛」という字を森のように3つ書けばいいのですが、ここで注意すべきは書き順です。
ここからは本当に細かい話になるのですが、実は左下の「牛」だけは部首の「うしへん」という扱いです。
つまりこの部分だけ書き順が異なります。全部で12画あるわけですが、7画目と8画目だけ要注意です!
なんと7画目は縦の棒、8画目が下の横棒になります。
ただしこれについては、本来の牛編の書き順と同じになると覚えておけばいいでしょう!
ってことは、「牝」や「物」も3画目は縦の棒なんだ!
おまけ:名前の漢字で使える?
「犇」という漢字は珍しいのですが、人名に使えるのか疑問ですよね。
結論から言うと、答えはNOになります。
その証拠に、法務省が定めた人名用漢字一覧表の画数12の中に、「犇」が含まれていません。
もちろん常用漢字でもありません。
つまり子供に「犇」という漢字をつけても、役所で受理されないことになります。
まとめ
今回は「牛」が3つ並んだ漢字「犇」の読み、さらに書き順も詳しく解説してきました。それではおさらいです。
- 「犇く」の読みは「ひしめく」、音読みは「ホン」、「奔」の元となった漢字
- 「犇々」と書いて、「ひしひし」と読む
- 「ひしめく」は「ぎゅうぎゅうと隙間なく集まる」という意味
- 書き順に要注意、7画目は左下の縦の棒
- 常用漢字、人名用漢字としては使えない
今回は以上です。「犇く」や「犇々」の読みを答えさせる問題は、二次会や飲み会でのクイズのネタに最適ですよ。
今の御時世気軽に「犇く」なんてことしちゃ駄目だけどね
同じ漢字が3つ並んだ漢字はほかにもまだあります。「七」が3つある「㐂」については以下の記事をどうぞ!
七が3つある「㐂」という漢字。滅多に見る機会はありませんが、いざ見かけたらどう読むかわからないですよね。どう読むのか、またそもそもどの漢字が元になっているのか、由来と入力方法を詳しく調べてみました!