漢字の中には、違う漢字なのに見た目がそっくりな漢字の組み合わせがいくつもあります。
今回紹介する井と丼もその一つです。
かたや井戸の「井」、かたやカツ丼などの「丼」、だけど中に点があるかないかの違いだけですね。
一体、この2文字ってなんでこんなに意味が変わるんだろう?
改めてこの2つの漢字の違い、そしてどうして点を付けただけで別の意味の漢字になるのか、掘り下げていきます!
先に出来た漢字は「井」だよ!
「井」と「丼」の違いとは?
「井」と「丼」の違いですが、一言で説明するとこうなります。
- 井:「井戸」を表した象形文字
- 丼:「井」に点(丶)を加えた形声文字
象形文字とは、物の見た目をそのまま書き表した文字で、形声文字とは、意味の部分と音の部分を組み合わせて作られた文字のことです。
今回で言いますと、「井」というのはまさに「井戸」の見た目から出来た文字となります。
そして「丼」はその「井」に部首の「点(丶)」を加えて出来た文字だということ。
たったこれだけの違いなんですが、そもそも点を加えただけで食器の「丼」になるなんて、意外ですよね。
ということでここからは2つの漢字の由来と関係性について、さらに詳しく見ていきます!
「井」の由来
まず漢字の「井」について見ていきましょう!
部首 | 二 |
画数 | 4 |
訓読み | い、わかし(名字など) |
音読み | ショウ、セイ |
意味 | 井戸。人の集まる場所、町など。井桁(井の字の形にしたもの) |
漢検レベル | 7級 |
「井」は象形文字の一種です。先程も説明したように、象形文字はある物の見た目が、そのまま文字に変化しているわけですが、「井戸」の形がその起源となっています。
上の画像のように、井戸の穴の入口部分にあたる「井桁」という木の加工品がちょうど「井」の形に見えます。
「井」は小学生で習う常用漢字で、「井上」や「福井」、「天井」などあらゆる場面で見かけます。
しかし音読みで「セイ」と読む場合もあります。例えば井戸の中のカエルを「井蛙(セイア)」、人が集まる街のことを「市井(シセイ)」と読みます。
また「井」は漢字の一部分として「开(ケイ)」のデザインで登場する機会があります。
よく見かける「形」や「刑」といった漢字の左側の部分がそれに該当しますが、元を辿れば「井」だったのです!
「丼」の由来と「井」との関係
部首 | 丶 |
画数 | 5 |
訓読み | どんぶり |
音読み | トン |
意味 | 井戸の中に物を投げ込んだ音。ご飯を盛る深みのある容器 |
漢検レベル | 2級 |
次は「丼」の解説です。「丼」は先ほど説明したとおり形声文字の一種ですが、わかりやすく漢字の足し算で考えます。
まず「井戸」があって、その中に水が入っていると考えてください。
この場合、水が「丼」の「丶」に該当して、「井戸の中の水、中の物」を意味するようになりました。
では「どんぶり」という音に関してですが、これは字面から井戸の中に石を投げ込んだ音です。
水の中に大きめの石を落とすと、「ドブン!」と音が鳴りますが、これを洒落て「どんぶり」に変わったということになります。
小石を投げても「ちゃぽん」という音しか鳴らないよ
「どんぶり=食器」になったのは何故?
「丼」の由来と音に関しては理解できたと思いますが、なぜそれがご飯などを盛る深めの陶器になるのか謎ですよね。
これは江戸時代にあったあるお店の名前が関係しています。
そのお店とは、一杯盛り切りの飲食物を出す「慳貪屋(けんどんや)」で、そこで使う入れ物を「慳貪振り鉢(けんどんぶりばち)」と呼んでいました。
この言葉を略して、「どんぶり鉢」と呼ぶようになったわけですが、当時は単に大きな袋も「どんぶり」と呼んでいました。
つまり、どんぶりとは「物を無造作に放り込む入れ物」という意味で使われていたわけですが、先程説明した「丼」という漢字もちょうど「どんぶり」と読むので、「丼」という漢字が使われるようになりました。
現在でも八丈島の方言で「どんぶり鉢」を「けんどん」と呼んでいるのは、これの名残だよ!
まとめ
今回は「井」と「丼」の関係性について解説してきました。それではまとめといきましょう!
- 「井」は象形文字、井戸の「井桁」の木の加工品がその由来
- 「井」は「形」や「刑」などの漢字の一部分としても使う
- 「丼」は形声文字、「井」に丶を加えて出来た漢字
- 「丼」を「どんぶり」と読むのは、水が入った井戸の中に石を入れた音が「どんぶり」と聞こえるから
- 「どんぶり」が食器の意味になったのは、江戸時代の「慳貪屋」で使われた「慳貪振り鉢」が由来
たった一画違いの漢字でしたが、やはり関係性はありました。
小学生で習う漢字でもあるので、子供にこの2つの漢字の違いを聞かれることもあります。知っておいて損はないでしょう。
今回は以上です。ほかにも見た目が似ている漢字の違いを記事にしていますので、興味があれば御覧ください!
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