夜空に突如として登場する長い尾をまとった彗星は、古来より多くの人々に観測されてきました。
そして最初に観測した人の名前がその彗星につけられたりもします。
実は彗星については未だに謎な部分が多いとされています。
中でも彗星の軌道については太陽系を公転する多くの惑星や小惑星とはまた違っており、綺麗な円を描くような形にならない場合がほとんどです。
ではどんな感じになるのか?
またそもそも彗星はどこからやって来るのか?
謎が多いとされる彗星の軌道についてとことん掘り下げましょう!
彗星はどんな軌道なの?
彗星は突如として夜空に現れ、大きな尾を纏っている姿が特徴的です。
中心には固体の核があるのですが、大きさとしては数km×数km×数kmほどで、その周りを核から噴き出したガスや塵が取り巻き、最終的に大きさが100万kmほどの巨大なコマを形成します。
コマは太陽に近づくにつれて放出されるのですが、太陽風に吹かれることで進行方向とは逆向きに伸びます、これが尾となるわけです。
尾が伸びた姿がすごく特徴的なので、別名“箒星(ほうき星)”とも呼ばれています。
また彗星から放出されたチリが地球の大気圏に降り注ぐことで流星が観測される、ということになります。
彗星と流星の違い!両者の関係性を探ると意外な事実が?
さて軌道についてですが、太陽系を公転する他の惑星や小惑星とは大きく違った軌道を描いているのが特徴で、大きく分けると以下の3種類になります。
- (細長い)楕円軌道
- 放物線軌道
- 双曲線軌道
この3種類についてですが、分かれる要素として用いられるのが離心率と呼ばれる数値です。
離心率とは簡単に言えば、円錐曲線(円・楕円・放物線・双曲線)の特徴を示す数値なのですが、天文学においては特に“軌道離心率”と呼ばれ、天体の軌道の絶対的な形を決める大事なパラメータとなっています。
この離心率の数値によって、その天体の軌道がどれだけ円から離れているかを表すのですが、簡単に言いますと、
- e=0なら(真)円
- 0<e<1なら楕円
- e=1なら放物線
- e>1なら双曲線
となります。
実は「e=0」となる天体は存在せず、多くの惑星や小惑星はeの数値が限りなく0に近い数値です。
参考までに地球の軌道離心率は0.0167で、限りなく円に近いのですが楕円です。逆に水星は0.2056と比較的大きめで、準惑星に降格した冥王星はさらに大きく0.248です。
しかし彗星については離心率eが1に限りなく近い数値だったり、場合によっては1以上の数値になっている物もあります。
すなわち放物線や双曲線の軌道になるわけですが、この場合は太陽に一度接近した後はもう戻ってこないため、非周期彗星と分類されます。
※また厳密に計算すると離心率がぴったり1になるようなこともなく、観測が不十分だったため、初期の段階で離心率を1と仮定して軌道を計算していることが多く、実際には楕円か双曲線のどっちかになります。
有名なものとしては、彗星の起源があるとされるオールトの雲が、他の恒星系が近づいたことで軌道や重力などが書き乱された結果、その一部が太陽に近づいてくるというものです。
また他にも「未知の惑星Xや太陽の双子星ネメシスが関係しているのでは?」というSF要素の強い説があって、謎に満ち溢れています。
彗星の周期による分類
古来から多くの人に観測されている彗星ですが、実は周期的に観測されている物もあれば、非常に長い年月をかけて回帰したり、一度観測したきり二度と戻ってこなかった彗星など多々あります。
比較的短い周期で回帰する彗星を「短周期彗星」、非常に長い周期で回帰する彗星を「長周期彗星」となって
- 周期が200年未満なら短周期彗星
- 周期が200年以上なら長周期彗星
と分類するようにしています。
短周期彗星は文字通り比較的短い周期で太陽に回帰するので、その軌道は楕円です。
ただし楕円でも他の惑星に比べて細長かったり、太陽系が誕生してからずっと回帰しているので、大半の揮発成分が失われて大きさも小さくなっています。
代表的な短周期彗星は、ハレー彗星ですね。
約76年の周期で地球に接近するのですが、多くの周期彗星の中でも一番最初に知られた彗星として有名です。
また軌道傾斜角が162度もあって、他の惑星と違って逆行軌道となっています。
一方で長周期彗星は離心率が1に限りなく近い数値か1以上になっていて、細長い楕円軌道となっていたり、周期が長すぎて回帰しているのかどうかもわからない非周期彗星(放物線か双曲線)も含めます。
短周期彗星と違って回帰している回数も少ないため、揮発成分があまり失われておらず、大彗星が多いです。
軌道が安定している彗星が少ないですが、1996年1月に日本人の百武裕司によって発見された百武彗星は話題となりました。
この彗星は「1996年の大彗星」とも呼ばれて、世界中で多くの人々が観測しました。
また太陽探査機ユリシーズが百武彗星から5億km離れた距離で、この彗星の尾の中を通過したことで、彗星の尾の長さがいかに大きいかも確認されました。
彗星はどこからやって来るの?
ここまでで彗星の軌道について詳しく探ってきましたが、
「彗星って一体どこから来るの?」
という疑問が残りますね。
これについての答えは簡単ですが、実は彗星の種類によってどこから来るのかが分かれます。
簡単に言いますと、
- 短周期彗星ならエッジワース・カイパーベルトまたは散乱円盤天体
- 長周期彗星ならオールトの雲
となります。
いずれもそれぞれの場所にある氷微惑星が何らかの原因(惑星の引力など)で軌道が変わり、太陽に近づいて来て、やがて彗星へと姿を変えます。
これらの領域はいずれも太陽系の端の方にあるのですが、わかりやすく言えば内側から
エッジワース・カイパーベルト→散乱円盤天体→オールトの雲
の順番になっています。
太陽系の一番端にあるオールトの雲に至っては、約1万天文単位(地球と太陽の距離の1万倍)も離れているのですが、過去には他の恒星の接近で軌道を乱された彗星が太陽系内部に飛来したり、地球に衝突して大量絶滅を引き起こしたとする説もあります。
太陽系の端から端までの距離はどのくらい? 太陽圏との違いとは?
これらの彗星はメインベルト彗星と呼ばれ、ほぼ円に近い軌道で太陽に近づくため、他の小惑星とあまり区別がつきにくいです。
代表的なメインベルト彗星としては、2013年8月27日に発見されたパンスターズ彗星で、これまでの彗星と違って6本の尾が観測されるなど、天文学者の頭を悩ませたそうです。
長周期彗星は大きく傾いている!
多くの彗星は、他の惑星と同様に軌道面に沿った軌道を取りますが、長周期彗星に関しては軌道面から大きくズレた動きをする彗星が多いのが特徴です。
軌道面とのズレは軌道傾斜角と呼ばれますが、多くの小惑星や短周期彗星などは大きくても20~30度までの範囲に留まっています。
しかし長周期彗星は、この軌道傾斜角がほぼ垂直になっていたり、場合によっては180度近くになっていて逆向きに公転していたりするなど、かなり極端な軌道になっています。
これは長周期彗星の起源となるオールトの雲が球殻状に分布している、と考えることで納得ができます。
全く持って予想がつかないところが、彗星の軌道の面白いところでもあり怖いところですね。
地球で観測したら、北極や南極の空を見上げると彗星がどこからともなく現れたりする可能性もありますから、360度全ての方位を観測しないと彗星を捉えるのは難しいでしょう。
まとめ
今回は彗星の軌道について詳しく解説してきました、参考になりましたら幸いです!
彗星に関しては太陽から遠く離れた冷たい場所にあるため、太陽系誕生当時の情報などが内部にそのまま閉じ込められたまま向かってきます。
特にオールトの雲を起源とする長周期彗星は大彗星が多く、以前の観測記録もなかったりすれば太陽系の起源を探る上で非常に大事な手がかりになります。
太陽系の端まで探査機を飛ばすことは現在の技術力でも難しいのですが、彗星に関しては向こうから近づいてきてくれるので、彗星接近時は太陽系の起源を探査する絶好のチャンスなのです!
もしかしたら生命の起源に関する凄い発見もあるかもしれませんね\(^^)/