政治系のニュース番組でよく登場する言葉といえば、「内閣」ですね。
しかし「内閣」に似た言葉として、漢字3文字の「内閣府」があります。
「内閣」と「内閣府」、一体何がどう違うんでしょうか?
漢字の「府」がつくかつかないかの違いだけど、ニュース番組ではどう使い分けるんだろ?
「内閣府」って確か大臣がいっぱいいた気がする。
正直とても紛らわしいと思います、意味の違いをハッキリ理解できている人がどれだけいるでしょうか?
似ている2つの言葉ですが、この機会にぜひ違いを把握してください!
実は「内閣府」というのは2001年に出来たからまだ比較的歴史が新しいけど、どうして出来たのか?その背景も見てみよう!
「内閣」と「内閣府」の違いとは?
「内閣」と「内閣府」、この2つの言葉は行政機関という意味では共通しています。
しかし上下関係や行なっている仕事内容、構成されるのが誰なのか、とにかくいろいろ異なっています。
改めて違いを簡単にまとめるならこうなります。
- 「内閣」とは日本国憲法で定められた日本の行政府
- 「内閣府」とは「内閣」の下に置かれた各省庁の調整を担う機関
改めて言いますが、「内閣=内閣府」ではありません。「内閣」の下に「内閣府」が置かれているのです。
また「内閣府」は「内閣」の下にある行政機関ですが、その歴史は比較的新しく、2001年の中央省庁再編に伴い新設されました。
ではそれぞれの意味と役割について簡単に説明しましょう!
「内閣」とは?
まず「内閣」については、学校の政治の授業でも習うでしょう。
わかりやすく言うなら日本の行政の最高機関で、予算の編成、法案の作成、政令の制定など、国の政治で最も大事な仕事を行います。
また現在19人の閣僚(大臣)がいますが、その大臣が担当する「省」と言う行政機関も束ねています。
※「省」と「庁」の役割の違いについてはこちらの記事をどうぞ!
ニュース番組で霞が関の官僚達がよく登場しますが、彼らは「省」と「庁」に所属する国家公務員です。どちらも国家の行政機関では共通していますが、改めて両者の違いや上下関係について詳しく迫っていきます!
また内閣が予算や法案を提出する機関はご存じ国会ですが、内閣は国会に対して責任を負うという制度が日本にはあります。
『議院内閣制』について詳しく知りたい方は、以下の記事をどうぞ!
日本の政治で最も大事な制度である議院内閣制は難しい言葉で学校で習ってもハッキリと理解できなかったり覚えていない人も多いでしょう。そんな人の為に意味や仕組み、問題点をわかりやすくまとめました!また議院内閣制と大統領制の違いも併せて解説します!
「内閣府」とは?
一方で「内閣府」というのは、2001年の省庁再編の際に、当時あった「総理府」と「沖縄開発庁」、「経済企画庁」が合わさって誕生した機関です。
内閣が行う仕事には様々ありますが、その多くが法律と政策の立案です。
しかし内閣が推し進める政策の中には、厚生労働省や国土交通省、外務省など各省庁に跨る内容が多いです。
例えば
- 食品の安全については、農林水産省と厚生労働省
- 少子化対策は、厚生労働省と文部科学省
- 原子力問題は、経済産業省と国土交通省と防衛省
- 地方創生は、経済産業省と国土交通省と文部科学省
- 防災対策は、国土交通省と防衛省
- 沖縄対策・北方領土問題は、外務省と国土交通省と防衛省
- 条約の締結は、外務省と法務省
など多伎にわたり、そのテーマは時代を経るごとに増えています。
これらの複数の省庁に跨る内容を取りまとめるための組織をいろいろと立ち上げ、それを統括するのが「内閣府」です。
言ってみれば、各省庁の利害関係の調整や意見を橋渡しする黒子役と言ってもいいでしょう。
「内閣府」はどうして出来たの?
2001年の中央省庁再編は、これらのテーマについて省庁の縦割りを解消し、省庁の間での横断的な対応を迅速にするのが大きな目的でした。
しかし近年はそのテーマが増えていく一方で、多くの業務が集中しています。
例えば原子力問題や防災問題、少子化対策などは内閣が代わっても継続して行わないといけません。
「内閣府」が設置された当時は6名だった内閣府特命担当大臣の数も現在は9名を超えていて、その肥大化が懸念されています。
こうした懸念から第3次安倍内閣では業務の見直しとして、今後各省庁へ事務の一部を移管する方針を決めました。
「内閣府」直属の機関
では次に「内閣府」に設置されている行政機関についての解説です。
「内閣府」に置かれている機関は「○○委員会」のほか、「○○局」、「○○庁」、「○○会議」などその名称は様々で、扱うテーマも多種多様です。
そのほとんどが東京都千代田区永田町の内閣府庁舎に所在しています。
- 内部部局
- 男女共同参画局
- 沖縄振興局
- 重要政策に関する会議など
- 経済財政諮問会議
- 中央防災会議
- 男女共同参画会議
- 審議会など
- 知的財産戦略推進事務局
- 北方対策本部
- 少子化社会対策会議
- 地方支分部局
- 沖縄総合事務局
- 外局
- 宮内庁
- 公正取引委員会
- 国家公安委員会
- カジノ管理委員会
- 金融庁
- 消費者庁
外局として設置される「宮内庁」や「金融庁」、「消費者庁」は「庁」なので、その“長”は大臣ではなく「長官」が充てられます。
とにかくいろいろな組織があって凄くややこしいですが、いずれにせよこれらの組織を統括するのが「内閣府」です。
そしてこれらの組織の中で、一部の組織を統括しそのトップに立つ人を『内閣府特命担当大臣』と定めています。
この内閣府特命担当大臣(通称「○○担当大臣」)は、「沖縄及び北方対策担当大臣」、「金融担当大臣」、「消費者及び食品安全担当大臣」の必置とされている3大臣以外にも、その時々の内閣によって定数が増えたり増えなかったりします。
2012年以降で例えたら
- マイナンバー制度担当大臣
- クールジャパン戦略担当大臣
- 知的財産戦略大臣
- 海洋政策担当大臣
- 地方創生担当大臣
などもあって、現在10以上のポストがあります。
こうしてみると「内閣府」って本当に大臣だらけだな。
おまけ:「内閣官房」とは?
実は「内閣」とつく組織は「内閣府」のほかにまだあって、それが「内閣官房」です。
「内閣」の下に置かれる行政機関で、「内閣」の仕事を補佐するのが目的です。
「内閣官房」の長が「内閣官房長官」と呼ばれていて、現在の安倍内閣では菅義偉官房長官となります、テレビでしょっちゅう見かけますね。
“影の総理”とも呼ばれていることが多いですが、総理大臣の右腕、補佐役なので事実上のナンバー2と言っていいでしょう。学校で例えると「教頭」先生になります。
主な仕事は内閣のスポークスマン役(記者会見をすること)ですが、例えば内閣の危機管理監という重大な役回りもあります。
例えば何か大きな災害やテロなどが発生した時に、いち早く危機管理対策本部を立ち上げるために、ほぼ常時東京にいることが望ましいとされています。
総理大臣は海外出張や国内の他の場所に移動することも多いから、その間官房長官は東京から離れられないんだよ。
まとめ
以上「内閣」と「内閣府」の違い、そして「内閣官房」についての説明でした。それではまとめといきましょう!
- 「内閣」は日本の最上位の行政機関、「内閣府」は「内閣」の下にある行政機関で各省の調整役
- 「内閣府」の扱うテーマは各省に跨り多種多様、特命担当大臣が複数名設置されている
- 「内閣官房」とは、「内閣」の補佐役、トップは官房長官
今や各省よりも「内閣府」の存在感が増しているとされていますが、それだけ一つの省だけでは対処できない仕事が多いということです。
これでまた一つ政治についての知識が増えましたね!