ローマ字と言えばみなさんも学校の授業で習ったことはありますね。日本語の平仮名や片仮名をアルファベットで表記する方法で、海外の人にもわかりやすいように作られた文字です。日常生活や仕事の上でワープロを打つことはあると思いますが、その時もローマ字で入力するのが普通になっていると思います。

ところが今教育現場ではこのローマ字の表記である混乱が起きているようです。実はこのローマ字にはヘボン式訓令式という2つの表記法があるのですが、どちらかに統一して欲しいという声があるのです!

ヘボン式と訓令式はどう違うのか? また今の日本ではヘボン式が主流になっている理由はなんなのか?その辺も踏まえて解説していきます。
 

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ローマ字の由来・歴史など

ローマ字とは仮名文字をラテン文字に転写する際の規則全般、もしくはラテン文字で表記された日本語のことを指します。その歴史や由来を探ってみると、戦国時代に日本に来たポルトガル人が最初だとされています、意外と歴史が古くて驚きです。

 
現在使用されるヘボン式ローマ字を考案したのが、江戸時代に来日したジェ―ムス・カーティス・ヘボンというアメリカの医師だそうで、この人が編纂した初の和英辞典である『和英語林集成』における日本語の表記法が由来となっています。仮名とローマ字を一対一で対応させた最初の方式で、英語の発音に準拠しているものでした。

しかし英語の発音を重視しているためか、日本語の表記と相容れないという意見が多くありました。そこで日本の政府は日本式ローマ字として日本語の発音を重視する訓令式を使用するべきだとして、1937年の近衛文麿内閣の時にヘボン式を全面的に排除する内閣訓令第3号を公布しました。

 
第二次世界大戦後にGHQの占領政策が始まるわけですが、各市町村の道路の入り口にヘボン式ローマ字で名称を表示する旨の指示を出したことでより混乱が拡大します。

そこで当時の日本政府は1937年に出した内閣訓令第3号を廃止して、1954年の時に新たに内閣告示第1号として公布をし直しました。ヘボン式の使用は「国際的関係その他の慣例をにわかに改めがたい事情にある場合」に制限しながらも認めるという内容になっていて、この形式が現在でも続いているということです。

 
現代社会では至る所でローマ字を見かけますがその使用方法はほぼ限定されていて、日本語で書かれた文章全てがローマ字で表記されるのは稀です。ローマ字表記されるのは日本特有の固有名詞(都道府県名や地名、施設の名前)や人名などがほとんどです。
 

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ヘボン式と訓令式の違い

ヘボン式と訓令式の違いとは一体何なのでしょうか?基本的にどちらも母音のa、i、u、e、oと子音(カ行ならk、サ行ならs)を組み合わせて五十音を表していることには変わりありません。

ヘボン式とは先ほども説明した通り英語の発音に近づける目的で作られています。それゆえ一部の平仮名の表記が訓令式と違いますが、具体的には以下のような違いになります。

  • し:訓令式はSI、ヘボン式はSHI
  • ち:訓令式はTI、ヘボン式はCHI
  • つ:訓令式はTU、ヘボン式はTSU
  • ふ:訓令式はHU、ヘボン式はFU
  • じ:訓令式はZI、ヘボン式はJI
  • ぢ:訓令式はDI、ヘボン式はJI
  • づ:訓令式はDU、ヘボン式はZU
  • しゃ:訓令式はSYA、ヘボン式はSHA
  • しゅ:訓令式はSYU、ヘボン式はSHU
  • しょ:訓令式はSYO、ヘボン式はSHO
  • ちゃ:訓令式はTYA、ヘボン式はCHA
  • ちゅ:訓令式はTYU、ヘボン式はCHU
  • ちょ:訓令式はTYO、ヘボン式はCHO
  • じゃ:訓令式はZYA、ヘボン式はJA
  • じゅ:訓令式はZYU、ヘボン式はJU
  • じょ:訓令式はZYO、ヘボン式はJO

“し”と”ち”が変わるとそれに連動して”しゃ・しゅ・しょ”、”ちゃ・ちゅ・ちょ”の表記も変わります。

これ以外に特に注意すべき点は”じ”と”ぢ”の表記と”ず”と”づ”の表記が同じになってしまうことです、これらの音は四つ仮名とも呼ばれていて発音的にも同じになってしまうことからこのように表記が一緒になってしまうと言われています。

 
またこれ以外にもヘボン式には以下のような細かいルールが決められています。

  1. 撥音の表記
  2. “ん”はN一文字で表記、”B、M、P”の前ではMで表記。

    • 仙台:SENDAI
    • 群馬:GUMMA
  3. 促音の表記
  4. 小さい”つ”は子音を重ねて表記、ただし”CH”の前ではTで表記。

    • 北海道:HOKKAIDO
    • 越中:ETCHU
  5. 長音の表記
  6. 長音のOとUは表記しない、∧や-といった長音記号はつけない。

    • 河野(こうの):KONO
    • 東京(とうきょう):TOKYO

    ※ただしプロ野球選手の名前は例外で、例えば世界のホームラン王の王貞治はO一文字で表すと体裁が悪いという理由でOHと表記されていました。

 

なぜ訓令式が用いられないのか?

多くの人が疑問に思っていることですが、なぜ現在の日本ではヘボン式が当たり前のように用いられているのでしょうか?学校の授業ではローマ字は訓令式で学んだ人も多い筈です、それが大人になるにつれてどこで学んだのかいつのまにかヘボン式ローマ字が主流になっています。

 
企業のロゴマークなどを見てもヘボン式が一般的です、例えば大手電気機器メーカーの富士通は企業名をローマ字でFUJITSUと完全にヘボン式で表記しています。

別に訓令式が間違っているわけでもありませんし、法律でそのように決まっているわけではありません。ヘボン式が主流になった背景にあるのは日本人の英語コンプレックスだと言われています。

教育現場では訓令式の方が五十音図と規則的に対応していますが、これだと幼稚すぎる!という変な意識を抱いている人もいるようです。繰り返しますがヘボン式は英語の発音により近づけた表記に過ぎません。日本の外務省も実質このヘボン式だけしか使用していない上に、経済界などの要請も強いみたいで、法的根拠はありませんがいつの間にか一般に普及してしまった、というのが理由です。(アメリカに媚びているとも言われていますがwww)

 
ただし法律的には訓令式を使用するのは別に間違いでないため普通に使って問題はありません。ワープロの文字入力でも、”ち”や”つ”を入力するときに”TI”や”TU”でも問題なく入力できます。というかヘボン式だと無駄なアルファベットが1文字余計に追加されていることが多いので、訓令式の方が若干早くなります。

もちろんヘボン式入力に慣れ切っている人も中にはいるでしょう、実は筆者もそうです。長年パソコンを使用していますが、すっかりヘボン式入力になっています。そういう人は無理に訓令式に移す必要はありません、どちらか自分に合う方を選択しましょう。

 
また意外と知られていませんが、実は訓令式はISOという国際標準化機構で採用し承認されています。ですので訓令式を使用するのは別に恥ずかしいことではないのですが、日本の外務省ですらそれを無視しているような状況では、本当の意味で国際化できているのか疑問と言わざるを得ませんね。
 

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