世の中には読みも同じで形が似ている漢字がいくつもあります。
今回ご紹介する「盤」と「磐」の2つの違いがわかりますか?
例えば「ばんじゃく」を漢字で手書きで書こうとすれば、「盤石」と「磐石」のどっちが正しいかわかりますか?
うーん、どっちも正しく見えるけれど?
「らしんばん」は「羅針盤」って書くけど、「ばんじゃく」は2つとも正解なの?
かくいう僕も手書きでどっちが正しいのか聞かれたら、絶対迷う自信があります(笑)
同じ「ばん」って読むんですが、形も似ていて凄くややこしいですよね。
ということで今回は「「盤」と「磐」の違いと、使い分けを具体的に解説していきます!
意味的にも凄く似ているけど、国語の授業では片方しか習わないんだ!
「盤」と「磐」の違いとは?
さて今回紹介する「盤」と「磐」の2つの漢字ですが、読みはどっちも「ばん」で共通しています。
ですが、両者には実は大きく違っている点がありました!それは、
「盤」が常用漢字で、「磐」が人名用漢字
ということです。
ここで誤解してほしくないのは、「盤」と「磐」は互いに異体字という関係でもなく、別々の漢字ということです。
因みに意味と漢字の特徴の違いを一言で解説しますと、
- 「盤」は「大皿、物を載せる台、大きな岩、曲がりくねる」で、部首は「皿」
- 「磐」は「岩、とどこおる、『磐城』の略称」で、部首は「石」
となります。
部首が「皿」と「石」という点でまず違っていますね。
この2つとも実は会意兼形声文字で、元を辿ればそれぞれ
- 「盤」=「般」+「皿」
- 「磐」=「般」+「石」
と2つの漢字が組み合わさって出来た字です。
ここで「般」の左側は「渡し船」の象形文字で、右側の部分は「手に木の杖を持つ人」を表した象形文字です。
「般」はこの2つの象形文字が組み合わさったことで「大きな舟を動かす様子」を表しており、それが転じて「運ぶ、めぐらす、あちこち移動する」という意味になっています。
では以上のことを踏まえた上で、ここからは両者の意味など詳しく掘り下げていきます。
「盤」についてさらに詳しく!
「盤」は、漢字の部首が「皿」になっていることからも分かる通り、意味としては「表面の平らな台、平たい円形の器、土台、大きな平たい石、皿」などで、「○○盤」という名詞として使うのが一般的です。
「般(=平らに広げる)+皿」だから、「平らに広がった皿」となるわけです。
この「盤」を熟語の一部として扱っている言葉は、
- 将棋盤
- 碁盤
- 音盤
- 鍵盤
- レコード盤
- 地盤
- 岩盤
- 羅針盤
- 終盤
などがあります。
また「序盤、中盤、終盤」という言葉もあることから、「勝負の一局面」という意味合いもあります。
「勝負は早くも終盤に差し掛かった!」みたいな使い方をするね。
「磐」についてさらに詳しく!
「磐」は、漢字の部首が「石」になっていることからも分かる通り、意味としては「表面の平らな石、平らで大きな岩」になります。
「般(=平らに広げる)+岩」だから、「平らに広がった石(岩)」となるわけです。
「磐」は音読みも画数も「盤」と一緒です、違いは人名用漢字であることと部首です。
正直人名用漢字ということで、「盤」に比べると見かける機会は少ないです。
主に地名として使われることが多く、代表例を挙げますと
- 磐田:静岡県南西部の市、ジュビロ磐田で有名
- 赤磐:岡山県中東部の市
- 磐城:福島県東部から宮城県南部の地域
- 常磐(ときわ、じょうばん):茨城県の大部分と福島県東部までの地域
- 磐井の乱:527年に国造磐井が起こした反乱
などがあります。
ただしこの中で「常磐」だけは「常に変わらない岩、永久に変わらないこと」という意味でも用いられます。
因みに名前として用いる場合は「磐」一文字で「いわお」と読んだり、「わ」一文字だけの場合もあります。
- いわお:磐、磐夫、磐男
- いわき:磐、磐夫、磐男
- かきわ:堅磐
- ばんきち:磐吉
- ばんさい:磐斎
どれもこれも難しそうだけど、普通の「岩」を使うよりかっこよく見えるかも?
「盤石」と「磐石」はどっちが正しい?
さてこれまでの説明で「盤」と「磐」の両方の違いを見てきましたが、同じ漢字を用いる「ばんじゃく」という二字熟語はどっちが正しいのでしょうか?
「盤石の構えで臨む。」or「磐石の構えで臨む。」
意味としては、「安定していて堅固で揺るがない」様子となります。
この問いについての答えですが、「盤」が常用漢字という違いがありましたね。
現在の日本の学習指導要領では、原則として常用漢字の方を優先するようにしています。
ということで普通に書き取りのテストで「ばんじゃく」を書く場合は、「盤石」が正解となります。
「盤石(磐石)」の語源
因みに「盤石(磐石)」という言葉の語源ですが、これは不動明王が座している土台から来ているとされています。
不動明王とは仏教の中に出てくる五大明王の一員で、大日如来の化身とも言われています。
お経では不動明王は「金剛石に座し」と書かれていますが、「金剛石(ダイヤモンド)」というのが不動明王の座していた土台です。
不動明王とは、その名の通り土台に座して不動のまま人の煩悩を焼き尽くし、救おうとしている固い意思を持った明王とされています。
全く動じない明王が座っていた土台、ということなので「盤石」という言葉ができたというわけですね。
この説だと、岩をもちいる「磐」の方がしっくりくるけどね。
平仮名で「ほか」を漢字で表記する際に、「他」と「外」のどっちが正しいのでしょうか?調べてみたら少し意外な事実がわかりました。2つの漢字の意味の違いと使い分け、常用漢字の細かいルールなどについて詳しく見ていきます!
まとめ
以上「盤」と「磐」の違いについてでした。それではまとめといきましょう。
- 「盤」は常用漢字、部首は「皿」、「鍵盤、羅針盤、終盤」などいろいろな言葉がある
- 「磐」は人名用漢字、部首は「石」、「磐城、磐田、常磐」など主に地名での用法が多い
- 「盤石」と「磐石」は両方とも同じ意味だが、常用漢字である「盤」で書いた方が好ましい
同じ読みでしたが、「盤」と「磐」のどっちで書いたらいいか迷ったら、サッカークラブのジュビロ磐田を思い浮かべてみましょう。
ジュビロ磐田の「磐田」は静岡県の「磐田市」から来ています。
このことから地名や人名には「磐」、それ以外は「盤」と連想付けられますね。
※似たような漢字の組み合わせはいくつもあります。「未」と「末」の意味の違いについては以下の記事をどうぞ!
漢字の「未」と「末」、似た者同士の2文字ですが、書き取りの際に書き間違えやすいと思います。「未開」、「結末」など漢字で書き取る際に、読み方から判断し書き間違えないための覚え方も紹介します。