みなさんが普段の生活で欠かせないものと言ったら電気ですよね!
一般家庭に送られる電力は発電所で作られた電気で、電柱に架けられた電線を伝って送電される仕組みになっています。
しかし電流には直流と交流の2種類のタイプがあるということは、皆さんも学校の授業で習うと思います。
そして我々が普段からお世話になる電気は、電線を伝って発電所から流れてきますが、実はここで流れる電流というのがまさに交流となるわけです!
改めてなぜ一般家庭には交流送電が採用されているのでしょうか?
また直流が身近に用いられるケースはないのでしょうか?
そもそも直流と交流の違いって何なの?という疑問を抱いている方もいると思うので、基本的な所から送電におけるメリット・デメリットも合わせて解説していきます。
直流と交流の違いを簡単に解説
電流には直流と交流の2種類があります。学校の授業でも習いますが、一般的に発電所から家庭に送られる電流は交流の形式になっています。
まず両者の違いについて簡単に解説しますと、以下の通りになります。
- 直流とは時間によって流れる向きが変化しない電流
- 交流とは時間によって流れる向きが周期的に変化する電流
直流はDC(Direct Current)とも表記しますが、一般的な家庭にもよくある乾電池や、冬の時期に悩まれる静電気は全て直流です。真空中でも陰極線として流れています。
静電気の仕組みをわかりやすく解説!実は体質も関係していた?
これに対して交流はAC(Alternating Current)とも表記しますが、時間によって向きが周期的に変化するということで以下のような正弦波のグラフになることで有名です。
正弦波とは高校の数学の時間でも習う三角関数のsinのことです。電気工学や信号処理関係の分野では必ずと言っていいほど出てくるので、必須の知識と言えます。
上の画像では横向きで時間、縦の幅は電圧の大きさを示していて、正の値を取る時と負の値を取る時で向きが逆転することになります。
見てわかるように電圧がゼロになる時間が存在するのが交流の特徴ですが、実はこれが送電時においては非常に重要なポイントとなります!
なぜ交流送電なの?
イントロでも紹介しましたが、電線を伝ってくるのは交流電流になっています。
でもなぜ日本の電力会社は交流を採用しているのでしょうか?
ここで先ほどの図を参照すると、交流では電圧がゼロになる時間が存在していますね。
この電圧ゼロというのが送電時においては凄く役に立ちます。
例えば地震や大型台風の上陸、あるいは人為的な事故によって電気を遮断しなければいけない事態が発生したとします。
ここで電圧ゼロ、すなわち電力供給がゼロになる瞬間を見計らってカットすることが交流の場合は容易にできます。
これなら電気系統や遮断器本体に与える負荷を最小限に抑えられるというわけです。
また交流の場合は変圧が可能である点も大きなメリットです。
発電所で作られた電気というのは、最初は数十万ボルトという超巨大な電圧になっていますが、一般の家庭用電圧は100Vですね。
当然この電圧のままでは家庭に送れないので、途中にある
- 変電所
- 電柱のトランス(変圧器)
でそれぞれ数千ボルト、100Vに降圧されることで一般の家庭に送電される仕組みになっています。
電柱の上をよく見るとバケツの様な物体が取りけられているのがわかると思いますが、あれがまさに変圧器で大電圧だった交流が100~200Vにまで下がっているのです。
さらに交流の場合はモーターという部品がそこまで複雑な構造になっておらず、メンテナンスコストを低く抑えらえるのも大きなメリットです。
直流の場合は手間がかかる?
対して直流の場合は交流に比べて電線の数が少なくて済むなど、一見低コストに抑えられるように見えますが、実は直流のモーターは交流と違って、ブラシと整流子という部品が必要なのです。
これが交流のモーターにはない点です。ブラシは摩耗しやすいので常に清掃やメンテナンスが必要で、手間とコストがかかるのがデメリットと言えます。
また発電所から送られてきた大きな電圧も下げる必要があるのですが、直流の場合は交流と違って簡単に下げられません。
直流は電圧を下げるのに一旦交流に変換させてから変圧器で高圧させ、再び直流に戻すという手順を踏む必要が出てきます。
この時に直流を交流に変換させるコンバータという機械が必要になることと、「直流→交流→直流」という変換を経る度に電力ロスが発生するので効率が悪くなります。
そして直流送電では交流と違って、電流がゼロになるポイントがありません。
常に一定の値で流れるため、遮断をさせることが困難だという欠点があります。日本のように地震や台風と言った災害が多い国では、これは致命的な弱点と言えます。
もちろん全くメリットがないかと言われればそうではなく、例えば長距離かつ大容量の送電が必要とされる海底ケーブルには直流送電が使われています。
電線に交流送電が用いられるようになったのは、19世紀の後半でした。当時アメリカでは発熱電球を発明したエジソンが直流送電を提案していましたが、それに反論していたのがジョージ・ウェスティングハウスとニコラ・テスラという2人の発明家で、彼らは交流送電を提案していました。
これが世に言う“電流戦争”です。エジソンは直流送電の特許使用料が最大の目的で、何としても自身の提案を翻すことはありませんでした。
しかし直流送電のデメリットは何と言っても変圧が簡単にできないことです。そのため電圧ごとに別々の架線を要する必要があったのですが、それに伴って電力網が複雑になってメンテンナンスに多大な費用が掛かるという問題が生じました。結果として変圧器が進化したことで電圧の変換が簡単になり交流送電が採用された、という流れになったわけです。
直流送電が用いられる場面は?
一般に電線と言えば発電所から交流の形のまま電気が流れているわけですが、実は全ての電線で交流が採用されているわけではありません。
最も身近な例では電車に電力を供給する架線も電線の一種なのですが、実は日本の一部地域では変電所で交流から直流に変換された電気を流すタイプの架線を採用しているのです!
電車というのは車両の上に架線があって、車輪の下にレールが敷き詰められていますよね?
上の画像を見てもらいますと、変電所から電車まで電気を送る際には架線を伝って、電車から変電所に戻る際には下のレールに流している、ということになります。
もっと簡単に言えば、乾電池(変電所)でランプを点灯させる(電車を動かす)という感じになるわけです!
このように直流で動く電車のことを直流電車と呼んでいます。因みに日本で直流電車が用いられているのは関東(茨城以外)、東海、近畿、中国、四国地方の鉄道で、それ以外の地域及び新幹線では交流がそのまま用いられています。
ただし交流電車では変電所が行うはずだった「交流→直流」を電車側で行う必要があります。
そのため交流電車では、「交流→直流」と変換させる装置を電車に搭載させる必要が出てくるため、直流電車よりもコストがかかります。
一般の家電製品は交流で動く?
家庭にあるコンセントまで送られてくる電気は交流ですが、そうなると「普通の家電製品も交流で動くの?」と疑問を持たれるかと思います。
しかしもう一度よく考えてみると、交流というのは電圧がゼロになったり、向きがプラスからマイナスに変わったりと少し厄介な性質を持っています。
この性質のまま果たして普通の家電製品が動くのでしょうか?
直流電車の例でも軽く触れましたが、電車では変電所から既に直流に変換された状態で送られてきます。
このことからわかると思いますが、電車を動かしているのは直流電流になります。
また交流電車も結局電車内で「交流→直流」と変換させているので、両方とも結局直流で動いているわけです。
ということは
「一般の家電製品も電車と同じでやはり直流で動いているんじゃない?」
と思われる人は多いでしょう。
ところが実はそうではないんですよね。
確かに直流の方が向きと大きさが安定しているのは確かですが、全ての家電製品が直流に向いているかと言われればそうではありません。
これは厳密に分けますと少しややこしいので、大雑把に言いますと
- パソコンや電子時計、テレビといった電子製品などは直流
- エアコンや冷蔵庫、洗濯機といった製品は交流
で動くという感じになっています。
ノートパソコンを使う人は多いと思いますが、ノートパソコンの電源ケーブルに“ACアダプタ”という直方体の物体がついているのをご存知だと思います。
このACアダプタというのが、コンセントから送られてきた交流電流を直流に変換している部品となるわけです。他にもACアダプタはなくとも機器内部に似たような部品があって、それで交流から直流へと変換しています。
対してエアコンや冷蔵庫、洗濯機といった家電製品は内部にコンプレッサーや送風機があるのですが、これらの装置の回転数を制御するためには交流電流で運転することが必要となるのです。
この技術を実現させているのがインバータ制御になります。
厳密に言いますと、いったん交流で受電した上で直流に変換してから再度交流に変換させるという、超面倒な手順を踏んでいます。
実は一昔前はこれらの家電製品は直流に一切変換されず、そのまま交流電流で動いていたのです。
ところが時代が進むにしたがって、消費者の省エネ・節電意識が徐々に高まっていくと、これまでの交流電流ではそのニーズに答えられることができなくなってきました。
そこで登場したのがエレクトロニクスという技術です。
エレクトロニクスとは、簡単に言えば電子制御を用いた技術のことで、これを取り入れた家電なら従来の物に比べて省エネ・節電が実現しやすくなりました。
細かい説明は省きますが、このエレクトロニクス技術を採用するためには、製品の内部に「交流→直流」へと変換させることが必要になります。
この変換において重要となるのがインバータ素子で、最新の家電製品の大半に用いられています。
一見無駄がありすぎるように思うかもしれませんが、こればかりは元が交流送電であることが大きな原因です。
かといって今から全ての電線を交流送電から直流送電に変えるわけにはいきません。それこそ大混乱が起きてしまいますからね(;^^)
まとめ
今回は電気の基本的な仕組みである交流と直流の違いと、送電時におけるメリットとデメリットなどについて解説していきました。
長くなりましたが今回の話を簡単にまとめておきます。
こうしてみると実は身近な家電では、直流と交流がお互いに活用されていたことがわかりますね。
交流は周期的に向きが変化しますので、基本的に普通の電化製品には不向きです。
省エネや節電を意識する際にも直流と交流の変換が大事になってくるというのは意外でしたね、やっぱり電気は奥が深い!