国家公務員試験の中で税のスペシャリストと言えば国税専門官ですね。
1987年公開の映画『マルサの女』でも話題になって、中高年世代の間では通称“マルサ”で知られているほどです。
ただ最近の若い人達はあまり知らないでしょうね(;^^)
この国税専門官も立派な公務員なので筆記試験を突破しなければいけないわけですが、他の職種の公務員試験と一体どこがどう異なるのか?気になりますね。
特に多くの人にとって気になるのが難易度、即ち“受かりにくさ”だと思います。
今回は国税専門官の試験について一次試験の合格突破ラインや、面接試験の比重なども踏まえて詳しく解説していきます!
国税専門官の難易度は?
国税専門官の試験は毎年国税庁が行う国税専門官採用試験という名称で、1次試験の日程は6月中旬、2次試験の日程は7月の中旬頃に行われます。
難易度についてですが、一言で簡単とか難しいとかは断言しがたいので、まずは倍率の数字でわかりやすく紹介します。
採用予定者数は毎年800~900人とされていますが、
- 申込者数は約18000人
- 最終合格者数は2000人前後
- 最終的な倍率は約9倍
となっています。
数字だけでみると、最終的な倍率が9倍という数字なので、一見他の公務員試験同様やはり難しそうに見えます。
しかし近年ではこの傾向にも変化が見られており、
- 採用予定者数を増加
- 受験可能年齢の引き上げ
といった措置もあって、若干ですが受かりやすくなったと言えます。
平成30年度(2018年度)の試験の申込者数の総数は15884人で、最終的な合格者数は
3479人
倍率に換算すると、
4.6倍
でした。
最終合格者数なので、1次の筆記試験と2次の面接試験の両方を突破した人のデータです。
4.6倍と言うのは、10倍近くの倍率が多い公務員試験の中では、かなり低い方だと言えます。
試験の難易度を除けば、最終的な受かりやすさの面では中級か上級の地方公務員試験より上でしょう。
公務員試験中級の難易度はどのくらい?予備校に通った方が確実!
※実は筆者も過去(2013年頃)にこの国税専門官の試験を受けて、1次試験だけですが、見事合格できました!
この時は素直に嬉しかったです。
面接試験で失敗し最終合格はできませんでしたが、それでも個人的な感触としては、恐らく合格しやすい部類だと思います。
少なくとも国家総合職よりかは易しい感触でした。
「会計学」と「商法」を除けば、試験範囲も他の公務員試験と被りやすいので、その点でも併願する価値はあるでしょう。
国税専門官は筆記重視!
国税専門官は実は面接試験の比重がそこまで高くなく、1次試験でほぼ決まると言っても過言ではありません。
1次試験と2次試験の両方を合わせて、100点満点とするなら、1次で70点、2次で30点という比率になります。
これだけ見ても、明らかに筆記試験重視だとわかりますね。
実際自分も過去に受けた時は、面接試験はすぐ終わりました。
確か15分前後だったと思いますが、あまりにも早く終わったので逆に不安になりましたね(笑)
結果は(案の定というか)不合格だったのですが、何と言うか筆記試験の時点でほぼ決まっていたのかなとも思いました。
参考までに地方自治体の面接試験は約20~30分、自治体によっては個別面接を複数回行ったり、集団討論や論文試験などもあるので、地方公務員の方が2次試験重視だとわかります。
面接まで含めた難易度としては、地方上級>国税という感じになりますね。
筆記試験のボーダーは?
国税専門官試験は筆記試験が重視されると書きましたが、具体的にどのくらいのラインなのでしょうか?
ズバリ言うと筆記試験の合格ラインは約6割、最低でも5割は取れていないと厳しいでしょう。
理想を言いますと7~8割です。これは面接試験まで考慮したボーダーで、これを下回って合格しても面接試験では逆転しづらいです。
また筆記試験は大きく分けて、基礎能力試験と専門試験と専門記述試験の3種類がありますが、目安としては、100点満点で考えた時、
- 基礎能力試験:40題で15点/30点
- 専門試験:54題で35点/50点
- 専門記述試験:1題で10点/20点
がボーダーライン、またそれぞれに足切りライン(一定の点数以上でないと自動で不合格になる)が設定されていることに注意です。
もちろんこれはあくまで1次試験のボーダーですから、2次試験でボーダーギリギリで挑んでもかなり厳しいでしょう。
会計学と商法対策は?
国税専門官を受験する際に頭を悩ませるのが、おそらく「会計学」と「商法」の2科目でしょう。
税のスペシャリストと言われる職業ですから、是が非でも覚えておかなければいけない科目です。
最初から簿記の資格を持ってれば有利ですが、他の公務員試験を重視する併願者にとっては辛いですね。
商法と会計学は必須科目として設定されている上に、合わせて10科目近くもあるので、対策を怠るときついです。
地方上級や国家公務員が第一志望の受験生は、この2科目で躓きがちですが、逆に言えば「この2科目は捨てて他の全科目を全力で取る!」という戦略でも大いに勝機はあります。
実際自分も1次試験に合格した時は、この2科目の対策はほぼしていなかったですからね。
ただ「会計学」は専門記述試験でも出題されます。
そして記述に関しては、「経済学」と「会計学」の2つの科目が比較的狙い目なので、やはり勉強しないというのは不利になりますね。
もし併願している場合で、国税専門官でどうしても落としたくないのなら、最低でも「会計学」だけでも勉強しましょう。
「会計学」の勉強をしておけば、将来的に税理士や会計士の資格を取る際にも有利なので損ではないです。
因みにおすすめの問題集は『スーパー過去問ゼミ』です。
国家公務員は最終合格しても官庁訪問を重ねないと内定がもらえませんが、国税専門官は2次試験合格なら最終合格、すなわちほぼ内定がもらえると言っていいです!
この辺は「最終合格はしているのに内定はもらえない」国家公務員試験と違って大きなメリットです。
厳密に言えば「どこで働くか?」を決める採用面接はありますが、官庁訪問よりも難易度は低く、内定がもらえないリスクはほぼないです。
国税専門官は不人気?
国税専門官は筆記試験の難易度としては地方上級と同じかそれ以上とされているのに、なぜか最終合格者数が多めに出るのは不思議ですね。
理由は単純で、国税専門官は単純に人気がないのです。
国税専門官を第一本命ではなく、“併願”として扱う受験生が圧倒的に多いのです。
僕が過去に受験した時も、やはり地方上級と国家一般職と併願していました。
公務員予備校の講師も「取りあえず受けた方がいい。」と言う感じで、国税専門官メインの試験対策を受けた記憶は僕もありません。
実際仕事内容も割とハードと言われており、転勤の可能性もあり敬遠されがちです。
こうした背景から国家公務員や地方上級、都庁職員を志望する受験生からもそこまで人気ではなく、仮に最終合格に至って内定を出しても官庁や市役所・県庁職員などに流れる受験生が多いのです。
ただ逆に言えばこれはチャンスと言っていいでしょう。
不人気ということは受かりやすいと言う事、「取りあえず受けた方がいい。」と言われるのは、あくまでそういう意味でです。
国税専門官は専門職なので、給与面での待遇は非常に良いです。地方によっても業務量に差は出てくるでしょう。
まとめ
今回は国税専門官の採用試験の難易度を詳しく紹介しました。参考になりましたら幸いです。
筆者も過去に受けたことはあるのですが、改めて見ると公務員試験の中では比較的ハードルが低くて正直驚きました。
正直もっと勉強しておけば絶対最終合格できていましたね、今更ながら凄く後悔しています(;-_-)
もちろん採用後に転勤があったり、仕事量が多くて割ときつい感じのイメージがつきまといますが、税務署の職員と言うだけでもかなり響きはいいでしょう。
税金についての知識がかなり深まる筈なので、税理士やファイナンシャルプランナーとして独立して生計が立てられやすいのも最大の強みですね。
将来性は非常に高いので受験する価値は高いです、仮に併願するとしても最終合格する勢いで対策しましょう。