大学生にとっては、大学4年で学生生活を終えて就職するか、あるいは大学院に進学するかで悩む人は多いでしょう。
大学4年で卒業すると「大卒」(または“学部卒”)、大学院まで進学して卒業すると「院卒」の肩書をもらいます。
漢字1文字違うだけですが、院卒の方が大卒よりも2年遅く就職します。
就職するのは院卒の方が2年遅くなるので、一見院卒の方が不利ではないかと思われます。
それでも院卒で就職する人は、(特に理系を中心に)多いです。
理由としては多くの学生が「院卒の方が給料は高いから。」という意見を耳にしているからでしょう。
この意見だけを単純に参考にして院に進学する学生も多いようですが、果たして本当に院卒の方が優れているのでしょうか?
そこで今回は大卒と院卒の違いについて、主に
- 初任給
- 年収
- 生涯賃金
の3つの指標を比較しながら詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてみてください!
大卒と院卒の違いと比較を詳しく!
まずは初任給から解説しましょう。
一般的に言われているのは、「学部卒3年目の給料=院卒の初任給」という事実です。
厚生労働省が発表した『平成29年賃金構造基本統計調査結果』によれば、以下のように大卒と院卒で初任給に3万円ほどの差があるという結果があります!
- 大卒の初任給:206100円
- 院卒の初任給:233400円
- 差額:27300円
これだけ見ても「院卒」という肩書は、あながち無視できませんね。(因みに高卒と大卒では約4万円の違いがあります。)
もちろん大卒の方が早めに就職できるので、最初の2年間での給与の総額で既に差は開いていますし、退職金だって長く働いている大卒の方が多めにもらえます。
ただ初任給が年俸制になっていて予め支給される額が決まっていることもあります、これは特に技術職や専門分野に特化した職に多いケースです。
しかし長期的なスパンで見ると、院卒の方が大卒よりも年収の推移も増えていきます。
例えば25歳時点と50歳時点とで比較しますと、
- 25歳時点:大卒の年収320万円、院卒310万円
- 50歳時点:大卒の年収800万円、院卒1000万円
という結果で、年齢が上がるにつれ逆転し、50歳上になると約200万円近くの差になります。
生涯賃金も大きく変わる!
では次に生涯賃金を比較してみましょう。
ちょっと古いデータになりますが、内閣府が2014年に行った「学院卒の賃金プレミアム」という報告書によると、
- 生涯賃金は大卒の男性で2億9163万円、院卒の男性で3億4009万円、差額は4846万円
- 生涯賃金は大卒の女性で2億6685万円、院卒の女性で3億1019万円、差額は4334万円
という結果になったそうです。
これだけ見ても確かに、院卒の方が優れていそうですね。
大学院に進学すると2年間就職が遅くなると言っても、トータルで見たらその差は埋まって最終的に逆転してしまうのです。
大卒と院卒では最終的な賃金の差がほとんどなくなり、逆転されるケースが多いですが、退職金はどうでしょうか?
退職金の計算は、「退職時における月給」×「勤続年数」なのですが、院卒の場合は大卒よりも2年は絶対に短くなります。
こう考えると一見退職金は院卒の方が低くなりそうです。
しかし問題となるのは「退職時における月給」ですね。
年収が必然的に高くなる院卒の方が、月給に関しても高くなりやすいので、この年数による差もあまり気にならなくなります。
最終的に退職金の差額もそこまで広がらないでしょう。
ましてや企業によって退職金の計算も違ってくるので注意しましょう!
院卒の年収が高くなる理由とは?
院卒の方が初任給・年収・生涯賃金ともに高くなる傾向がありますが、主な理由としては
院卒の方が専門知識が身についていて、優秀な人が多い傾向がある
これに尽きるでしょう。
何と言っても2年間専門的な勉強をしているので、大卒の学生に比べると有利になります。
となると当然スキルが求められる仕事に就きやすくなります。
そしてそうした仕事の方が賃金も高くなるのです。
また大学院に進学するということは、それなりに優秀で真面目であるという見方もできます。
特に一部の本当に優秀な学生は、教授からの推薦をもらって就職面接に臨んだりします。
教授からの推薦というのは院卒者ではかなり有利に働きます、ただし学科内の上位何%と限られていますが...
企業によっては大卒と院卒によって昇進できる限界が決まっていて、そもそも大卒ではより高い地位に昇進できなかったりします。
「結局学歴社会じゃないか!」と批判されそうですが、これが嫌ならあまり院卒を重視しない企業に入った方がいいでしょう。
院卒を重視しない企業や職種もある?
ただしリクナビの採用情報を見ると、一部の採用欄には「大卒・院卒初任給:○万円」と書かれていたりして、大卒と院卒でも同じだったりします。
このように全ての企業が、院卒を重視しているわけではないことも知っておきましょう。
基本的に院卒で給与が高くなるのは、研究職・技術開発職などに多いですが、それ以外(例えば営業関係や事務職など)の職種では、大卒と院卒の給与をまとめているようです。
院卒と大卒では仕事の割り振りに違いが出てきて、その仕事の質によって給与が高いか低いかも変わってきます。
大学院に行けば専門的な分野を学んで、質の高い仕事に活かしやすいのは事実ですね。
有力な人材として成長し活躍してほしいと強く思っている会社は、その人の持ち味や特性、知識をフルに活かせる仕事を振らせてくれるでしょう。
ただし一般的に多くの企業では、新入社員にどういった仕事を割り振るのか、またはどこの部署に配属するかは上司や人事部、さらに経営状況にも依存されるのが現実です。
こうなるとモチベーションが上がりにくく、なかなか成果が伸びてこないという悪循環にも陥りかねません。
本来その人がやりたくもない仕事をやる必要とかが出てきちゃいますからね。
院卒だろうと大卒だろうと、期待通りの結果が出なければ給与も増えません。
会社にも依りますが成績係数の微差でも出世に差が付いて、あっという間に逆転されたりもします。
グローバル化の流れなどで徐々にですが、こういった成果主義の風潮が強い企業も増えるでしょう。結局大事なのは勤務意欲になります。
グローバル化で日本の将来はどうなる? メリットとデメリットは?
院卒は圧倒的に理系!
大学院に行くことで、特に理系の学生では研究職や開発職に就きやすくなるというメリットは大いにあります。
筆者の通っていた大学でも院に進学している学生はかなり多かったです。
「院卒」という肩書があるだけで大卒よりも給料が上がるからというのも理由ですが、それ以上に就職率も院卒の方が高いのも理由にあります。
特に大企業に入りたい学生は、圧倒的に院卒が有利になるそうです。
一部の企業では(工学系に限りますが)大卒は院卒よりも、かなり下の方に見られています。
例えば以下のような重厚長大なメーカーが特に院卒者を多く採用します。
- ホンダ
- ダイキン工業
- 京セラ
- オリンパス
- 住友エレクトロン
- 三菱自動車
- NTTコミュニケーションズ
企業としては優秀な人材が欲しいのです。
その優秀な人材は、特に理系では大学院まで進学し専門知識を高めた学生が大半を占めます。
もちろん安易に鵜呑みにはできないのですが、少なくとも大手企業での就職をものにしたいなら、院卒という肩書きが大きく響くでしょうね。
後は単純に専門知識や技術力が身に付きやすいのも院卒のメリットです。
将来的にその企業の研究職に就いて、ノーベル賞級の開発や本当に役立つ研究をしてみたいという強い意欲があるのなら、年収や給料に関係なく進学するべきでしょう。
まとめ
今回は大卒と院卒の違いについての解説でした、それでは改めて今回の内容をまとめます。
- 初任給に関しては、院卒の方が大卒よりも約3万円高い
- 年収に関しては、最初の頃は大卒の方が高いが、徐々に院卒の方が高くなっていく
- 生涯賃金に関しては、男女ともに院卒の方が高く、その差は4000~5000万円
- 一部の職や企業では大卒も院卒もほぼ区別がない
- 特に工学系では専門知識が活かしやすいので院卒者が有利になりやすい
最後は僕自身の意見になりますが、研究が好きでも無いのに、大学院へ進学しても意味はありません。
大学院ともなると大学生時代以上に講義の難易度も上がって、忙しさが増します。こうしたことは覚悟しましょう。