大学を卒業した後は普通の民間企業に勤めて働く人は多いですね。

僕は就職せず大学院に進学しましたが、今考えてみたらそのまま就職してもよかったかなと思います。





しかし中には社会人になった後でも、大学院に戻ってくる人がいるんですよ。

そしてさらに驚いたことに、博士号を取得する人もいるんです!

正直「社会人になった後で博士号なんて取れるのか?」と僕自身凄く疑問に思いました。

またそもそもなぜ博士号取得にこだわるのでしょうか?

今回は社会人が博士号を取得するメリットや費用、さらに働きながらでも可能なのかどうか、徹底的に解説していきます!


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社会人の博士号取得の流れは?

そもそも「社会人でも博士号が取得できるの?」と疑問に思ってらっしゃる方も多いでしょうが、結論から言いますと可能なのです!

具体的にどういった流れで取得できるのかについてですが、概ね以下の3つの方法があります。

  • 博士(後期)課程に社会人枠で入学し修了する
  • 社会人大学院に入学し修了する
  • 論文を提出することで論文博士の称号を得る

この3つがあります。基本的に、一部を除いて前期課程を修了して修士号を有していれば、博士後期課程(以降“博士課程”で統一)に入学する資格があるとみなされます。

修士と博士の違いについて詳しくは以下の記事をどうぞ!
学士と修士と博士の違い!就職関係でも超大事になる?

これらの事柄については、文部科学省の「博士課程(後期)の入学資格について」というページで記載されています。

特に年齢制限も設けられていないのが大きな特徴です。そのため博士課程に進学すると、教授よりも年上の人が在籍していたりします(;^^

■社会人で博士号を取得する人は多い?

一般的に馴染みがないように思える社会人の博士号取得ですが、実は年々増えているようです。

僕が大学院に通っていた頃も、普通に年配の人がいて驚いた記憶があります。


科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)という機関の調査によりますと、過去30年間で博士課程に進学者している人の数は、2003年をピークに減少しています。

一方で同じ2003年頃から社会人の入学者数は増加傾向にあって、2015年時点では約38%と2003年に比べて16%も増えたのです。

社会人になって、勉学の大切さが身に染みて分かる人、さらに将来を見据えてもっと上位の学位を取得したいという熱意を抱いた人が増えてくるのでしょう。


因みに海外や国際関係の場では博士号を持った実務家も多く、決して研究者だけに限った話ではありません。

グローバル化が進んでいくと、博士号を取得している優秀な外国人が日本にも入ってきます。

そうなった時にやはり博士号を持っているというのは、大きな強みになるでしょう。



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博士課程に社会人枠で入学する

まずこちらの方法については、基本的に修士課程を卒業した後の人が、そのまま博士課程に進学する際のやり方とほぼ変わりません。

単に入試区分が「社会人」になっただけで、入学試験も行われます。(ただし“入学検定料”が別途かかるというデメリットがあります。)


例えば九州大学の総合理工学府では、「博士後期課程」の入試区分の中に「社会人特別選抜」という枠が用意されています。
九州大学大学院総合理工学府

九州大学の総合理工学府では、4月入学と10月入学の2つの枠が用意されています。

どちらも入学試験が用意されており、修士学位論文に関しての口頭試問を行っているという形式ですね。

入学後は普通の学生と同じで研究をしたり、講義を受けたり、ゼミや学会に参加したり、論文を完成させて博士号を取得します。これが一般的な博士号取得の流れです。

博士号取得にかかる費用負担は?

博士課程は原則として3年間在籍します。

さらに論文作成や学会での発表など、ある程度の成果も求められるので、それ以上在籍する可能性も出てきますが、何と言っても時間とお金がかかります。

費用については国立大学なら、通常の学部生と同じような感じで計算できます。

すなわち「入学料+授業料×3」という計算で、入学料が約29万円、年間の授業料が約52万円だとすると、

  • 290,000+520,000×3=1,840,000


  • 3年間で計185万円かかることになります。

    学生時代だとこの授業料の高さがネックになるので、博士課程進学を諦める若者も少なくありません。

    さらに勤続年数も下がって退職金も低くなりますし、仮に無事終了出来ても期待通りの企業に就職できるとは限りません。


    しかし社会人という立場は働いて給料をもらっているので、経済的余裕があります。(その代り奨学金はもらえなくなりますが。)

    もちろんそれでも負担は大きいことに変わりはないです。

    また結婚していたり子供がいる場合もあるはずなので、その場合は必ず相談して、慎重に判断しましょう!

    ただし研究者の育成に熱心な一部の企業については、会社側がある程度社費で負担してくれることもあります。

    こればかりは在籍する企業次第となりますが、もし社会人になってからも博士号の取得を目指すのなら、入社する際に確認した方がいいでしょう。

    仮に自分が投稿した論文が学界から表彰されるなど、その功績が称えられれば学費の免除か減額という可能性もあります。


    仕事と学業の両立は難しい?

    これは言わずもがなかもしれませんが、社会人である以上会社勤めをしながら大学に通うことになります。

    他の学生と同じように毎日研究室に通えません、通えたとしても夜間のみでしょう。

    ましてや毎週研究室のゼミに参加することは、普通に会社勤めしていたらほぼ無理です。


    もちろん社会人ということは大学側も理解しているはずなので、無茶な義務が発生することはありませんが、仮に単位修得にも関わってくるなら結構問題です。

    大学にもよりますが、必要単位数は一般の学生と同じで、いかに効率よく短時間で単位を修得するかがカギとなります。

    事前に指導教授と相談するなどして、ゼミの必要出席数を減らしてもらうか、土日開講の講義や集中講義に出席するといった工夫が必要です。


    講義によっては試験があったり、レポートの作成が義務付けられることもあります。

    夜間か土日の空いた時間を、勉強時間に割り当てないといけなくなりますので、その分プライベートの時間も減るでしょう。

    ※工夫すれば、社会人でも十分勉強時間を確保できなくはないです。詳しくは以下の記事をご覧ください!
    社会人が勉強時間を確保する方法!平均以上にするのは意外と簡単?

    こうした側面もあって、社会人になった後で博士号を取得するのは非常に大変です。

    ただし次に紹介する「社会人大学院」に入学すれば、こうしたデメリットを幾分かは緩和できます。

    社会人大学院に入学する

    大学に通うという点では同じになりますが、一部の大学のみある「社会人大学院」に入学するというのもおすすめです。

    「社会人大学院」というだけあって、通常の大学院と違ってより社会人に適したスタイルになっているのが特徴です。

    具体的には

    • 入試試験で外国語試験が免除され、小論文と面接のみ
    • 夜間に行う講義や演習が多い
    • 履修期間が短いコースが多い

    などのメリットがあります。


    また社会人大学院には、サテライトキャンパスを利用できるメリットもあります。

    サテライトキャンパスとは、通常の大学のキャンパスから離れた場所に設置されたキャンパスのことで、主に都市部の予備校や学習塾などにあります。

    都市部の会社に勤める人にとっては利便性が高いので、これを利用しない手はないです。


    ただし社会人大学院を設置している大学としては

    • 青山学院大学
    • 慶応義塾大学
    • 筑波大学
    • 一橋大学
    • 早稲田大学

    などがあるのですが、いずれの大学でも経済や金融、法律、国際、心理、医療・看護など文系の研究科のみとなっています。

    残念ながら理系の研究科では社会人大学院が設置されていません。

    ■海外の大学院プログラムという手も?

    欧州の国々に多いのですが、大学院プログラムを利用するという手もあります。

    メリットとしては学費が安いことにあります。

    また日本を拠点にして通うことも可能です。1年に数回現地に通って指導教授と話し合い、後は日本で働きながら研究を続けられるのです。


    論文博士になる

    これはあまり正攻法とは言えないかもしれませんが、実は博士課程に進学せずとも、博士号を取得する方法があります!

    それが論文博士と呼ばれる制度です。

    論文博士とは文字通り「論文を執筆して提出するだけで博士号が取得できる」というある意味素晴らしい制度で、これは日本特有のものです。

    論文博士のメリットとしては、仕事と両立ができる上に、費用もあまりかからないということに尽きます。

    基本的には会社の研究で得た成果をまとめて論文として提出し、その成果に対して博士号が得られるということになります。


    大学に通う必要はないのが大きなメリットですが、論文を出すだけだと求められる業績の量が多い上に、何より大学院での教育や実習も受けられません。

    博士になるからには、教授との真剣な議論や、学会で何度も発表するという体験が必要で、それを軽視しているという批判も強まってきました。

    真面目に頑張っている若い学生からしたら、やはり不公平感は否めないですよね。


    こういった理由から今後廃止される見込みもあるので、正直あまりおすすめはしません。

    場合によっては「そこまで博士号にこだわるのか?」という目でも見られかねないですからね。

    因みに通常の学生と同じやり方で博士号を取得する場合は「課程博士」と呼ばれますが、大学によって付与される通し番号によって

    • 課程博士:甲○○○○号
    • 論文博士:乙○○○○号

    という感じに分けられます。

    課程博士と同等の扱いが受けられるかどうかも怪しいので、慎重に検討しましょう。


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    社会人で博士号を取得するメリットとは?

    ここまでは社会人が博士号を取得するまでの流れについての開設でした。

    では博士号を取得することのメリットは何があるのでしょうか?


    まず第一に挙げられるのが、修士卒よりも「研究者としての実績がある人物」とみなされることにあります。

    これが何を意味するのかと言いますと、社会的地位が高くなって、大学の教員(アカデミック・ポスト)か大手企業の研究職からスカウトされる可能性が高くなります。

    もちろん自身が作成した論文が、学会で高い評価を得た場合に限りますが、それでも博士号を取得しないよりかは断然有利になります!


    また長い文章を論理的に構成する力も養われますし、研究を通じて独自に新しい発見や考えを導いて構成できる能力が磨かれます。

    しかしこういったメリットがあるにもかかわらず、修士卒からそのまま博士課程に進学する学生は減ってきています。

    現在の日本の理系学生の多くが、「修士卒(または“院卒”)はあくまで大手企業への就職を有利にするため」と考えているからです。


    確かに院卒は大卒よりも初任給など、待遇面がより高くなります。

    さらに博士過程でも進学すると、学費の負担が馬鹿にならないのも大きな壁となっています。

    そのため修士号までで満足して、「博士号までは習得する必要はない。」という考えを抱いている学生も少なくありません。


    ただし国際的に見ると、「研究者は博士号を持っていることが最低条件だ。」という考えが強いです。

    博士号がないと海外の偉い研究者とまともに議論すらできないこともあります。簡単に言えば、博士号は運転免許みたいな扱いなのです。

    例えばビザを申請する際に、博士号を取得していれば「Dr.」という肩書きが名乗れますが、なんとなく自身のブランド力が磨かれたようでいい気分がしますね(;^^

    グローバル化が進んで、海外でも働く日本人や日本で働く外国人が当たり前になってきたこのご時世では、尚更博士号という称号が強烈に響きます。

    まとめ

    今回は社会人の博士号取得の流れとメリットについての紹介でした。

    今の日本の就活は修士卒でそのまま企業に就職する人が多いですが、仮に就職した後でも社会人枠として博士課程を取得することは可能です。

    働きながら博士号を取得できるって、素晴らしくないですか?


    もちろん博士号の取得を最終目標としてはいけませんし、費用と労力と覚悟が必要になりますが、取得さえすれば間違いなく大きな強みとなります。

    何より博士号の取得を推奨してくれたり、学費を援助してくれる企業も一部ありますので、活用しない手はないです。

    もし修士卒で就職した人で博士号に未練があると感じたなら、ぜひチャレンジしてみてください!


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