大学生の卒業後の進路と言えば就職が真っ先に思い浮かびますが、中には大学院に進学してより高度な専門知識を学習する学生も多いです。
決して必須な選択肢とは言えませんが、特に理系の学生にとっては、大学院へ進学したことが就職先への強いアピールポイントとなる場合があります。
しかし中には「本当は就職したかったけど仕方なく院に進んだ」という方や、「同期の友達も行くみたいだから自分も」みたいな理由で進学する学生も多いようです。
就職氷河期という言葉が出てきて久しいですが、あくまで就職への有利・不利だけで考える学生が増えてきたように思えます。
だけど特に強い動機もなく、大学院に進学しても後悔する可能性もあります。
確かにメリットも多いようにも聞こえますが、一方でちゃんとデメリットもあります。
自分にとって大学院に進学することが大きなプラスになるかどうか、今回はメリットとデメリットの両方を詳しく見ていきます!
大学院とは?
そもそも大学院とは、大学の学部で学んだ知識を活かして、さらに深い研究や学習を行う教育機関のことです。
大学院は学校教育法第97条によって、通常大学に併設されています。
例えば文学部の「文学研究科」、理学部の「理学研究科」、さらに農学部の「生命農学研究科」など、基礎となる学部組織の上に配置されています。
この他にも大学によって独自の大学院が併設されています。
例えば九州大学は他の大学とは組織名称が若干異なっているようで、学生が所属するのが学府で、教員が所属するのが研究員という枠組みになっています。
芸術工学部だと、芸術工学研究院と芸術工学府と芸術工学部の3つの組織があるわけです。
こうした活動に熱心な日本の大学はRU11と呼ばれていますが、下記の11の大学がこれに該当します。
- 北海道大学
- 東北大学
- 東京大学
- 名古屋大学
- 京都大学
- 大阪大学
- 九州大学
- 筑波大学
- 東京工業大学
- 早稲田大学
- 慶應義塾大学
学部を卒業しても研究室は変わらない?
併設されている場合学部を卒業しても、そのまま同じ研究室に配属される場合もあります。すると同じ研究室に、学部生と院生が混在するというパターンも珍しくありません。
実際僕の母校でもこんな研究室が多かったです。
あくまで学部生から大学院生へと肩書が変わるだけ、ということです。というより本格的に研究者へと変わりたいなら、学部から博士課程まで一緒の研究室で研究を続けた方が効率はいいでしょう。
もちろん大学院に進学することが決まった後で、改めて研究室の配属先を変えることも可能です。
ここはもしかしたら大学院の入試の成績次第かもしれません。
もちろんこの後に控える博士課程の3年間もありますが、日本では大学院に進学する学生の大半は修士課程の2年を終えて就職するので、「大学院=修士」と一般に認識されています。
修士課程と博士課程、さらに学士との違いについて知りたい方は以下の記事をどうぞ!
学士と修士と博士の違い!就職関係でも超大事になる?
大学院進学のメリットを詳しく!
それでは大学院に進学することのメリットを詳しくご紹介していきましょう!
まず何といっても就職についての話になりますが、大学院卒業の場合、初任給が高いというメリットがあります。
これについては大学の教授や先輩など、多くの人が口にしているので知っているという人も多いでしょう。
具体的にどのくらいの金額になるかと言いますと、某大手企業では、
- 学部卒1年目の場合:21万6000円
- 院卒1年目の場合:23万1000円
となります。あくまで一例です。
これについては企業によって差は開きますし、なにより専門性の高い職業程この差は開きやすいでしょう。
ただし多くの企業では昇給制度があります。
すると学部卒で入った社員は約2年間で、結局院卒者の初任給と変わらなくなります。
逆に院卒者はこの2年間の給料は得られません。
既にこの時点で2年分損をしているという見方もできます。
しかしこれについては、やはり専門職の高い職や、そもそも入社後の実績や功績次第で大きく変わるでしょう。
院卒者でかなり優秀な人は大きく伸びますし、逆に学部卒の社員でも努力次第で院卒者を大きく引き離せます。
年収や生涯賃金も高くなる?
政府の統計によると、「40歳代以上で年収700万円以上の労働者の比率は、学部卒で30%、大学院出身者が50%以上。」という結果があります。
これだけ見ても確かに院卒者の方が、最終的には年収と生涯賃金が高くなる傾向があります。
もちろん企業によって全然違いますし、そもそも院卒者がほとんど重視されない場合もあるので注意しましょう!
大卒と院卒でどういった違いがあるのかについて、もっと知りたい方は以下の記事をどうぞ!
大卒と院卒の違い!初任給・年収・生涯賃金の比較も調べてみたよ!
プレゼン能力や論文作成能力が磨ける!
大学院に進学しますと、嫌でも論文の作成をしないといけません。
もちろん学部生と同様講義に出席して、一定の単位を取得することも卒業の条件ですが、修士の場合はゼミや学会で発表する機会が増えます。
上手くいけば自分が作成して投稿した論文が外部に公開され、様々な研究者からも見られます。
自分が作成した論文があわよくば世の中の誰かの研究者の目に止まって、引用され役に立つかもしれません。
研究に熱心に向き合ってきた学生ほど、この論文は宝になるでしょう。
修士課程の2年間をみっちり過ごせば論文作成スキル、さらに学会やゼミの回数も多くなるので、必然的にプレゼンスキルも上達します。
学会については海外で行われる場合もありますので、同時に海外旅行まで楽しめちゃう可能性もあります。こうなると嫌でも英語の能力を磨く必要が出てきますね。
プレゼンは社会人になってからも活用できるので、これはかなりの強みになるでしょう!
大手企業への就活が楽になる?
このメリットは特に理系学生に強く言えることですが、大手の名の知れた企業への就職がしやすくなります。
国立大学の理系の院生の場合、大手企業で5社程度だけで面接して就活を終えたなんて言う話もよく耳にします。
また教授からの推薦もあります、院卒者は実力や知識が認められているということの証かもしれませんね。
大学院のデメリットは?
大学院への進学はメリットだけではありません。
まず何といっても進学するのに、お金がかかるというデメリットがあります。
具体的にどのくらいお金がかかるのか、詳しく見てきましょう!
初年度の学費の相場は、
- 国公立大学で60~80万
- 私立大学の文系で80~120万
- 私立大学の理系で100~180万
という感じになります。
因みに同じ国公立大学でも、法律を専門とした法科大学院では一気に上がって、200万前後くらいになります。
さらに私立大学の場合は大学によってばらつきが激しいですが、概ね国立大学よりも高めです。
特に理系の大学院は総じて高めです、修士課程2年で合計200万円前後かかる所も普通にあります。
もちろん学費が高いということで、奨学金の制度も充実しています。
しかし奨学金を利用する場合でも、結局就職して返済しないといけません。
最近では大学院に進学する学生も増えて、それと同時に奨学金を利用する学生も増えました。
実際日本学生支援機構の奨学金は、平成29年度時点で129万人の学生が利用しているとのことです。
一方でやはり財力的に厳しく大学院までの進学は諦めたり、仮に進学しても返済できないという学生も多くなってきています。
もし一人暮らししている学生だったり、アルバイトしても生活費に困るようだったら、さすがに厳しいと言えます。
「それでも大学院に進学したい!」というのであれば、返済が不要な給付型奨学金を利用するという手もあります。ただ審査は厳しいかもしれません。
奨学金の制度(給付型)
就職が2年以上も遅れる
こればかりはどうにもなりませんが、学部卒の学生よりも社会人デビューが2年も遅れます。
万が一留年してしまうと、さらに3年とか4年も遅れることになります。
既に同期の学生は社会人デビューを果たし、会社で実務経験が積まれています。
そうした学生との間では実務経験や社会人としての経験、知識がやはり不足してしまうので、いざ院卒という肩書で入社しても、同じ年齢の学部卒の人よりも劣ってしまいます。
仮に大学院で開発エンジニアの技術や知識を積んでも、実際に会社で実務経験とスキルを積んだ方が給料にも繋がりますので、学部卒の方が詳しかったりします。
2年の差というのは馬鹿にできません。
もちろん院卒者はそれ専門の職や部署に最初から配属される可能性もありますが、そもそも院卒者ということでかなり期待されています。
逆に言えば同世代の人とそれほど差がなかったりしたら、「大学院で2年間何を学んできたの?」とガッカリさせられます。
初任給も高いですが、それなりにプレッシャーもかかるわけです。
まとめ
大学院進学のメリットとデメリットについて、いろいろ書いていきましたが自分としては
- とにかく研究が好きで、大学で好きなだけ研究に没頭したいか研究職に就きたいのであれば大学院へ進学
- お金はかけたくなく、早く社会人としての生活を送りたいのであれば就職
という考えでいいと思います。
改めて言いますが、大学院というのは専門的な学習や研究が出来る場所です。
しかし大学院の2年で培った知識と経験は、早めに社会人になってからでも十分得られる可能性はあります。
確かに大学教授など偉い人と対談できる機会があるかもしれませんが、社会人では外部の企業の人と取引きしたりして、実務におけるコミュニケーション能力も高くなります。
また結局大学院進学には高い学費がかかります。
確かに大学院生では、研究や勉学においては充実した時間と環境があります。
しかし夜遅くまで研究室に籠っても、1円にもお金は稼げないのが現実です。
僕の学生時代も夜遅くまで研究室にいた院生は多くいました。
アルバイトをすることも可能ではありますが、学部生の時と違って(特に理系学生は)忙しくなって、並行しながらするのは至難の業です。
実際卒業した同期の学生は既に社会人になって、ある程度お金を稼いでいる現実があります。
社会人としての必要なスキルと経験が得られるという点では、大学院で研究生活を送ると埋められません。
こう考えますと、修士としての肩書を意地でも得る必要性はないとわかるでしょう。
もちろん大学院生でもインターンシップを経験したり、教授と海外に行って自分の研究成果を発表したりする学生もいました。
優秀な学生は大学院に進学してさらに伸びるでしょう。
ただし本当に研究することが好きで、勉学に対して抵抗もなく、ある程度の経済的余裕がある学生に限られます。
単に就職するのが面倒だからとか、就職先が決まらなかったから、就職先の企業へのアピール材料として院卒の肩書が欲しい、といった理由で進学するのも考え物です。
そもそも大学院を卒業した後も、就職活動をしないといけませんからね。
それが嫌なら本格的に研究職を目指すか、起業するしかなくなります。
生半可な動機では全てが中途半端でうまくいかなくなります。
学費の面でも負担は大きいので、改めてメリットとデメリットを詳しく把握してから、進学するか否かを判断してください!