今回のお話はこれから大学受験を控える学生の方、特に理系の方は参考にしてほしいと思います。
テーマは理学部と工学部の違いについてです。
大学受験を控える上で避けて通れないのが学部選びです。大学にはいくつもの学部がありますが、中でも理系の方は医学部や建築学部、歯学部、薬学部、理学部、工学部など多くの学部があります。
その中で特に募集が集中するのが理学部と工学部だと思われます。
僕自信この学部選びに悩んでいた時期もありました。
結局先生のアドバイスを参考にして工学部を選びましたが、物理より数学が好きだったので理学部もいいんじゃないかと悩んでいたほどです。
個人的な見解ですが、この2つの学部はどことなく似ていて実は履修する科目も共通しているのがあります。
今回はこの2つの学部の違いを徹底して解説します。学部選びに悩んでいる理系の高校生はぜひご覧ください!
理学部と工学部の違いとは?
理学部と工学部ってどこがどう違うの?
こんな疑問を抱く理系の高校生は多いと思います。僕自身もそうでした。
大まかにですが、ざっくりと2つの学部の違いについて説明しますと
- 世の中で起きている様々な自然現象や謎について理論的に解明・探求するのが理学部
- 社会に貢献する発明や開発をするための知識や技術力を深く学ぶのが工学部
となります。
もっとわかりやすく宇宙分野で例えますと、理学部に向いている人は天文学者タイプで工学部に向いている人は宇宙飛行士タイプ、ということです。
宇宙の成り立ちや真理、さらに無数にある惑星や恒星について深く研究するのが天文学者(=理学部)で、宇宙空間に実際に飛び出して探査や調査、研究に携わるのが宇宙飛行士(=工学部)となります。
人気が高いのはやはり宇宙飛行士ですね。
天文学者は地球にいたまま望遠鏡を覗いたり、コンピュータを使ったシミュレーション研究に没頭しないといけない地味なイメージが大きいので、どうしても敬遠されがちです。
また人工衛星の開発に大きく関係するのもやはり工学部です、こちらはスマホでも使うGPS機能に直接関係する分野なので尚更です。
※因みに僕はどちらかと言えば天文学者タイプです(;^^)
このように現代社会において実用性が高く、直接的に役立てる研究に携われるのが工学部のメリットと言えます。
ただし工学部だけで十分かと言いますと、そうではありません。
理学部で培われた基礎研究や理論がないと、そもそも工学系で何か開発する時やより応用性が高い研究に繋げられないので、やはりどちらも必須ということになります。
2016年にオートファジーの研究でノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅教授も基礎研究の重要性を訴えていました。
そういう意味では理学部と工学部を両方とも設置する必要がありますが、残念ながら両者を比較しますと、理学部の方が少ないことがわかりました。
理学部と工学部の大学の数の比較
2つの学部の数を「みんなの大学情報」で参考にしてみると、工学部のある大学の数は226校、対して理学部のある大学の数は139校でした。やはり工学部の方が多いです。
- 琉球大学
- 九州大学
- 九州工業大学
- 熊本大学
- 鹿児島大学
- 岡山大学
- 広島大学
- 神戸大学
- 京都大学
- 大阪大学
- 名古屋大学
- 横浜国立大学
- 筑波大学
- 東京大学
- 東京工業大学
- 千葉大学
- 東北大学
- 弘前大学
- 北海道大学
※東京大学は理科Ⅰ類と理科Ⅱ類と理科Ⅲ類の分け方ですが、Ⅰ類が理工系、Ⅱ類が農学と生物系、Ⅲ類が医学系になっています。
自然科学についての理論を追及したり発展させることがメインの学部のためか、工学部に比べると設置されている大学は少ないです。
設置されている大学が少ない理由としては、主に実験設備の費用が関係しています。
工学部の方が機械設備などが多く費用が大きくかかりそうですが、後述するように理学部は就職先の選択肢も狭まれます。
より多くの学生の需要に沿う運営をするために、就職率の高い工学部を優先する大学が多いので理学部を削減する選択をしがちなのです。
むしろ理学部ではなく理工学部という名称で設置されている大学が大半のようです、早稲田や慶應義塾大学も同様です。
理工学部とは理学と工学の両方の立場から、総合的で学際的な研究と教育をするとされていますが、実際には理学系と工学系の両方の学科を持つだけだったり、事実上の工学部となっている大学も多いです。
では次の章からは理学部と工学部でそれぞれどんな学科があるのか?
具体的にどんな履修科目があるのかについて、より具体的に解説していきます。
理学部について解説
まず理学部について説明します。
理学部とは、自然科学を中心とした教育や研究を行うための学部です。
自然科学とは、自然に属する様々な現象・事象についてその法則性を明らかにする学問や知識を指します。高校の理科の授業で学んだ化学・物理・生物・地学は全て自然科学です。
そのため多くの大学にある学科名も、基本的にわかりやすい名前が多いです。
- 数学科
- 数理学科
- 物理学科
- 化学科
- 生物学科
- 地球科学科
取り扱う科目によっては他の学部と内容的に被る場合もあります。
例えば生物は医学部と農学部でも取り扱いますし、数学・物理は工学部、化学は薬学部と歯学部などでも取り扱います。数学に関してはどちらかと言えば哲学的な面が強いとも言われています。
他の理系の学部と似たような感じではありますが、他の学部が出来上がった理論を実社会の発展に繋げるため応用したり新技術の開発に利用するのに対して、理学部では理論自体の成立過程を熟考したり再構築したりして、新たな理論へ結びつける能力を培うことを重視しています。
理学部で学ぶ知識は役に立つのか?
理学部志望者には残念ですが理学部で勉強する内容や知識は、今の社会ではあまり役に立たないかもしれません。
それこそ半導体や電気関係、情報学でプログラミング言語について深く学ぶ工学部の方が、現代社会では大いに役に立ちます。
ただしそれが本当に全て正しいのかと言いますと、そう単純ではありません。
今は役に立たない研究でも100年後の社会では当たり前のように普及し、多くの人の役に立つ基礎研究になっていると言えます。
産業革命時代にはあまり電気に関する研究はされていませんでした。蒸気機関が主流だった時代なので当然ですが、今の社会では電気なしに成り立たなくなっていますよね?
逆に工学系で学んだ知識は今の時代に確かにマッチしていますが、数十年後には役に立たない技術になっている可能性もあります。
今の時代で言いますと量子コンピュータに関する研究もそれに該当します。
簡単に解説しますと、量子コンピュータとは文字通り量子力学を用いたコンピュータでまだ研究段階にあるコンピュータですが、これが実現されれば従来のコンピュータよりも比較にならないほど超高速な計算ができます。
もしかしたら数十年後には量子コンピュータで計算するのが当たり前になっているかもしれません、そうなると従来のコンピュータは必然的に廃れます。
進路に悩む多くの高校生が、ここまで先の未来について予測するのは確かに難しいです。
ただし基礎研究をしっかり学ぶということが、将来的に多くの人の役に立っているという長期的な目線を持つことも大事ですよ。
ノーベル賞受賞者は多い?
理学部は新しい理論を構築するという点が非常に強みで、仮に歴史に残るような発見をした場合にはノーベル賞を受賞する可能性も大きいと言えます。
そこで工学部出身者と理学部出身者、どちらがノーベル賞受賞者が多いのでしょうか?
2016年にオートファジーで東京大学の大隅教授が受賞したことが記憶に新しいですが、これまで理系の分野で受賞した日本人は22人います。
その内12人は理学部出身です、比率で言えば工学部も理学部も半々といった感じですね。
ただし受賞した研究内容を見てみると、工学系の分野は専ら新技術の開発や電気・機械系が多いのに対して、理学部の分野は理論科学が中心と言えます。
工学部について解説
次に工学部について説明いたします。
工学部とは、工学の教育研究を施す大学の学部の一つです。工学とはエネルギーや自然の利用を通じて便宜を図る技術一般、また数学と自然科学を基礎として社会や環境の発展を目指す学問のことです。
一般的に言われる技術者やシステムエンジニア、さらに建築士といった職業を目指す人が入るべき学部が工学部です。
※世界で初めて大学に工学部を設置したのが日本で、1919年に東京帝国大学(現在の東京大学)に設置されました。現在では旧七帝大を始め数多くの国公立大学と私立大学に設置されています。
工学部で履修する科目とは?
工学部で履修する科目は大学によっても差がありますが、概ね1年次は数学や物理・化学といった基礎科目を中心に学習し、2年次から本格的に専門科目を習い始めるという流れです。
この専門科目は1年次の基礎科目に比べて難易度も格段に上がります。基本的に後述する学科によって専門科目は分化しますが、ほぼ全ての学科で共通して履修するのは位相幾何学や代数学の基礎分野です。
また基本的な工学系の実験(太陽光パネルのエネルギー効率やインピーダンスの算出、電気・電子回路の設計など)はほぼ必須です。
さらに情報社会の発展に伴い、コンピューターによる数値計算、C言語・JAVAによるプログラミングの基礎なども学ぶ可能性も高いです。特に情報系では!
その他多くの国家資格が取りやすくなることも工学部の強みで、無線技士系や1級建築士、ITパスポートなど大学の講義で学ぶ内容がフルに活かせます。
工学部にある主な学科
工学部にはいくつもの学科があります。かなりの数がありますが全て列挙するのは無理なので、代表的な学科だけを下に紹介しておきます。
- デザイン工学科
- 応用化学科
- 電気情報工学科
- 機械航空学科
- 環境工学科
- エネルギー科学科
- 物質科学工学科
- 建築学科
概ねこれら8つの学科があると考えて大丈夫です。ただし全ての大学の工学部が同じ学科で共通しているわけではなく、大学ごとによって学科の数と種類はバラバラです。
因みに文科省の調査では全部で660以上あるそうです。
またこれらの中で人気があるのはやはり機械航空学科です。
なぜなら“航空”と名前がある通り、当然航空機関係の仕事に就ける可能性が高いからです。場合によってはパイロット、さらに宇宙飛行士への道もあると言えます。
日本人宇宙飛行士として初めてISSに長期滞在した若田光一さんは、九州大学工学部の機械航空学科出身です。
しかし人気がある分やはり倍率も高いです。入学試験の内容自体は一緒ですが、合格ラインとなる偏差値は他の学科に比べて高い傾向があります。
例えば九州大学工学部では電気情報工学科の前期の偏差値が63なのに対して、機械航空工学科は65となっています。
将来は飛行機のパイロットや宇宙飛行士を目指したいという強い熱意がある方だけ挑戦しましょう。
生半可な気持ちで勉強しても受かりません。仮に合格できても講義の難易度のレベルも格段に上がり、卒業のための条件も他の学科に比べ厳しいと言えます。
工学部と理学部の卒業後の進路の違いは?
工学部と理学部について解説してきましたが、改めて違いについて簡単にまとめますと工学部は技術者を養成するための学部で、理学部は自然科学の理論について考える学部ということです。
ではこれから大学受験を控える高校生はどちらを志望するべきなのでしょうか?
結論から言えば将来的に技術者かエンジニア、さらにコンピューター関係の仕事に就きたければ工学部一択でしょう。
就職に関しても日本はモノづくり大国と言えるため、大手企業に就職しやすいのが強みです。
開発職や技術職なら、大学で学んだ知識をフルに活かしやすいです。
もちろん大学院に進学してより高度な知識や技術を学ぶ選択肢もあります。
修士号や博士号がある学生の方が就職はより有利になります、ただそのための学費はどうしても高くついてしまいますが…
一方理学部を卒業した人でも、自ら工学を自習して技術者となったり、経済学や心理学といった人文・社会科学系の分野を専攻する人がいるなどその進路は多岐にわたります。
また薬学系や化学系の場合は多くの企業で研究職があるので、そちらを目指すのもアリでしょう。
その他教育関係で理科や数学の教員を目指す場合でも理学部は向いています、もちろん教員免許も必須になりますけど。
逆に考えれば理学部出身者の方は進路の上でも応用が利きやすいのが特徴です。
僕自身もどちらかと言えば「学問を探求したい!」とか「なぜこの現象がこうなるのか知りたい!」という考えが強かったので、理学部の方が興味がありました。
しかし将来性を考えて結局工学部を選択することにしました。もちろん難易度や偏差値のこともありましたが、それ以上に実社会に大きく貢献できるという意味ではやはり工学部なのでしょう。
近年では政府主導による防災計画の強化、災害に強い都市計画作りなどでより工学系の学生のニーズが強まってきました。
そういう意味では確かに工学部の方が人気が高く学生が集まりやすくなります。
ただし理学部と工学部共通して言えるのは、やはり大学生活が忙しくなることです!
文理選択をする際にも悩むポイントですが、文系の学生に比べても卒論関係や勉強量などが多くなって忙しくなります。
文理選択が決まらない!後悔しないために気を付けるべき点とは?
アルバイトなどで勉強をさぼってしまうと卒業すら危ぶまれます。大学生活を楽しく満喫はできないでしょう。
最後に一言!
理学部と工学部、どちらが自分に向いているか、どちらを選択するべきか迷っている高校生も多いと思いますが、基本的には
- モノ作りに関する実戦的な知識を深く学んで、社会により貢献したいなら工学部
- 物事の真理や法則を探求したい、または研究職や教育関係に就きたいなら理学部
と判断しましょう!
それでもどうしても決めきれなかったら、それこそ自分が入りたいと思っている大学の公式HPを要チェックすることです。
各学部の各学科でどんな研究がされているのかが詳細に紹介されています。
またオープンキャンパスに参加することもオススメです。
入学後に後悔しないためにも、事前にチェックするのは凄く効果的です。
勉強の時間は惜しいかもしれませんが、オープンキャンパスなどに参加することでモチベアップにも繋がりますよ!
教師など周りの人の意見を仰ぐのもいいですが、最終的には自分自身の目で調べて判断することが大事です。